「絶対に母親のようにはならない」と誓っていたはずなのに、気づけば子どもに向かって同じ言葉を叫んでいた――。
“毒親育ち”の女性がわが子に同じことをしてしまう「世代間連鎖」はなぜ起きるのか。心療内科医・鈴木裕介氏が『毒親グレーゾーン 親の目から自由になれない大人への処方せん』(日経BP)にてわかりやすく解説する。(全4本の3本目)
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「母に似てきた」が怖い
「自分は絶対に、母親のようにはならない」、そう決めていたはずなのに、自分の口から母親と同じ言葉が出てきた。子どもが言うことを聞かないと、声が急に大きくなり、「何度言えばわかるの」「あなたのために言っているの」と責めてしまう。
子どもの怯えた顔を見た瞬間、目の前にいるのが昔の自分のように感じられ、強い自己嫌悪に襲われる。母親が不機嫌によって家族を動かしていたことがあれだけ嫌だったのに、自分も黙り込んだり、ため息をついたりして、パートナーに気持ちを察してもらおうとしている。あるいは、子どもに「ママがこんなに頑張っているのに」と言ってしまう。
こうした経験をすると、強い自己嫌悪を感じるとともに、単なる「言いすぎ」では済まされない感覚に陥ってしまうかもしれない。
「結局、自分も母親と同じ人間だった」「本性が出たのだ」「自分は結婚したり、子どもを持ったりするべきではなかった」……と、そこまで考えてしまう人もいる。しかし、前述のように、親と同じ反応が出たことは親と同一の人格であることを意味しない。
人は、強い負荷がかかると、その場でまったく新しい対応を一から考えるのではなく、過去に何度も見聞きし、使い慣れた反応を利用しやすくなる。自分では嫌っていた親の言動であっても、子ども時代に繰り返し観察し、その親のもとで生活するために学習してきたものであれば、心のなかには反応のひな型として残っている。
だから問うべきなのは、「私は母親と同じ人間か否かなのか」ではなく、「なぜ、この状況で母のような反応が呼び出されたのか」である。
人格システムの一部による反応を拡大解釈せず、起きた現象を一つのパターンとして見ていく。そうすることで初めて、変えられる部分が見えてくる。
