経済学者・成田悠輔氏がゲストと「聞かれちゃいけない話」をする対談連載。第16回目のゲストは、ピアニストの内田光子さんです。対談は2026年8月、アメリカ北東部ヴァーモント州の小さな町、マールボロで行われました。(構成・伊藤秀倫)
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「日本で生まれたことはラッキーなこと」
成田 (音楽に)素人だからこそ伺えることがあると思ってまして。
内田 もちろんどうぞ。
成田 たとえば音楽と言語の関係に興味があるんです。内田さんが弾かれるような音楽のほとんどには、言葉による物語はないですよね。
内田 そうではないです。これは借り物の意見ですけれども、お聞きになって。セルヒー・プロヒーというウクライナ人の歴史家が「あなたの一生で一番幸運だったことは?」と聞かれて、「小さい言葉の国で生まれたことだ」と答えたんです。つまり、ウクライナは、国土は広いけれど言葉(ウクライナ語)は小さい。対してロシア語、英語といった「大きい言葉」を学ばなければ、生きていけなかったけれど、それがよかったというんですね。
成田 大きな言葉の背後には、大きな文化が広がっているから。
内田 そう。彼は「言葉は文化である」と言ったんですが、その意味では、私にとって日本で生まれたことはラッキーなことです。これは外から学べない言葉だから。日本語というのは、人間関係だけの言葉です。その最大の目的は“Agree with each other(お互いに同意する)”ことにあるというのは、実に不思議ですよね。
