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当初は定められてなかった災害派遣

 そもそも自衛隊の災害派遣とはなんだろうか? 現在でこそ自衛隊の本来任務として災害派遣は位置づけられ、自衛隊法にも災害派遣に関する条文が存在する。だが、自衛隊の前身となる警察予備隊はその発足当初、災害派遣は任務として定められていなかった。

 ところが、災害が頻発した1951年には、7月、8月に福知山と善通寺の部隊が現地部隊長の判断により非公式に派遣された事例があり、同年10月のルース台風では、山口県知事の要請により、被害の大きかった山口県北河内村へ小月駐屯部隊の2個中隊300名が派遣され、物資輸送や道路啓開といった活動に従事している。このルース台風での事例が公式な初の災害派遣とされる。

被災地で自衛隊に求められる作業は多岐に及ぶ ©共同通信社

 しかし、このルース台風の事例でも警察予備隊に災害派遣に関する規定はなく、総隊総監部(現在の陸上総隊に相当)からの「出行命令第一号」によって派遣されている。法律の条文として災害派遣が定められたのは、1952年の保安庁法からだ。以降、自衛隊は多くの災害で部隊を派遣することになる。

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阪神大震災まで低かった「災害派遣」への期待

 前述の内閣府による世論調査は、1972年度から3年に1度行われているものだ(ただし、1995年度は阪神淡路大震災後に例外的に行われている)。1972年度の調査から2014年度の調査まで、自衛隊に期待する役割、存在目的について、「災害派遣」と「国の安全の確保」の推移についてグラフ化してみよう。なお、年度によって微妙に質問内容や回答する内容、回数が異なっているが、ここでは同一のものとして扱う。

©文藝春秋

 1972年度から「国の安全の確保」に大きく差をつけられてきた「災害派遣」が、阪神淡路大震災後に行われた1995年度の調査で一気に抜き去っていることが分かる。自衛隊の存在目的を災害派遣に求める傾向は、阪神淡路大震災以降のものなのだ。

 一方で、1972年度の調査の段階でも「自衛隊がこれまでどんなことで一番役に立ってきたと思いますか?」という質問に対し、74.4%が災害派遣と答えてトップになっている。自衛隊に対する評価とその存在目的は、多くの国民は別に考えていたことが分かる。ところが、それも阪神淡路大震災で評価=存在目的になってしまった感がある。