トヨタ自動車は、全約50車種を2030年までに次世代車「SDV」に転換すると10月17日に明らかにした。SDVとは、ソフトウェア・ディファインド・ビークルの略称で、ソフトウェアを変更することで価値や機能をアップデートできる車を指す。

 文藝春秋2026年10月号では、研究開発部門を率いる中嶋裕樹副社長兼最高技術責任者(CTO)がSDVについて語っていた。その一部を紹介します。(聞き手 井上久男)。

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ナノ1桁台の半導体が必要

 ──SDV化を進めていくうえでは、内燃機関とEVとを比較すると、どちらが対応しやすいですか。

 中嶋 それは内燃機関のほうが難しいです。バルブの閉じ方を変えるなど細かい制御を重ねることで、エンジンは求められる性能を発揮します。加えて排ガス規制にも対応しないといけない。究極の「すり合わせ」技術によってエンジンは成り立っていると言ってもいい。ですから、内燃機関車でSDVを開発するほうが圧倒的に難しい。一方でEVは、端的にいうとモーターの回転数を変えれば制御できてしまう。

次世代車「SDV」全約50車種を転換するとトヨタ自動車が発表 ©AFP=時事

 しかし、最近では高性能な半導体が開発されたことでコンピューターの処理能力が上がり、バッテリーEVでしかできないと思われていた高度な制御が、エンジンでもできるようになりつつあります。トヨタはいま、エンジン車のSDV化に取り組んでいます。「エンジン車は作り続けますが、事故ゼロは達成できません」では、えらいことですから。

 ──SDV化を進める上で、自動車産業でもナノレベルの高性能半導体チップが必要になってきますね。

 中嶋 これまでの自動車では、最先端の半導体でなくてもよかったんです。しかし、事故ゼロを追求してSDV化を進めていけば超微細加工した半導体が必要になります。どこまでの微細化が必要かは、求める処理能力によって変わってきます。AIが運転手の心理状態をモニターして加速を制限するようなレベルまで求めると大変です。たとえば、隣から車が急に割り込んできて運転手がイラッとした瞬間、アクセルを踏んでも加速させないようにするといった技術を導入する場合には、0.001秒単位で制御できないとダメなので、ナノ1桁台で超微細加工した半導体が必要になるでしょう。