これまでSDVは、どちらかというとエンターテインメント的な文脈でスマホのような車と言われてきましたが、それだと扱う情報量は大したものではありません。しかし、走る、曲がる、止まる、ましてやモーターではなくエンジンの制御までやるとなれば、桁違いの情報量になります。いままで我々が半導体製造会社のトップと協議するなど、まったくなかったことですが、それが日常的になりました。
事故を未然に防ぐ「ガードレール」
──SDVとも関係する自動運転ですが、昨年、日産自動車が英国のAI新興企業のウェイブ・テクノロジーズと提携して、AIに判断させる自動運転車を2027年度から商品化すると発表しました。AIに周囲の状況を判断させて操縦させる方式を「End-to-End」と呼びますが、一方でこれまでの自動運転技術は、開発者が交通ルールや様々な状況判断を予めソフトウェアに覚え込ませる「ルールベース」が中心でした。トヨタの場合はどちらの方式を採用していますか。
中嶋 ずっと「ルールベース」で開発をしてきました。たしかに、ここにきて「End-to-End」方式が爆発的に性能を向上させています。ただ、トヨタとしては、不幸にも万が一事故が起こった時に、その責任は誰が負うのかを明確にしておくべきだと考えています。「End-to-End」方式を導入して事故が起きた際に、「AIシステムがそう判断しました」だけでは説明責任を果たしたとは言えないでしょう。
やはりAIシステム上にも、事故を未然に防ぐ「ガードレール」のようなものが必要なのではないでしょうか。その「ガードレール」が、「ルールベース」だと思います。我々は「ハイブリッド」という言い方をしていますが、「End-to-End」方式を導入して自動運転技術を加速度的に進化させる取り組みをしながら、同時にシステムの中に「ガードレール」を設置しておく。両方の長所を採り入れながら開発しているイメージです。
※SDVへの大転換を進めるにあたりトヨタ自動車が直面している悩みとは。この続きで中嶋裕樹氏が語っています。約8500字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年10月号に掲載されています。本稿は2026年7月31日に『文藝春秋PLUS』で配信した記事の雑誌掲載版です(中嶋裕樹「章男会長とのケンカの真相をお話しします」)。
