『ファンタ爺のめざめ』

 著書『アウト老のすすめ』が続々重版のヒット作となったみうらじゅんさんが、その続編にあたる『ファンタ爺のめざめ』を上梓した。老後の不安を吹き飛ばし、日常をエンタメに変えるヒントが満載の本書から一部を抜粋し、紹介します。

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夏の終わりの「ファンタ爺」日記

8月25日
 渋谷PARCOに『MOTHERのかたち。』展を見に行く。ゲームソフト「MOTHER」が誕生して約40年。ドット絵で描かれたキャラクターたちには公式の粘土フィギュアが存在する。その中の150体を作ったのが僕の美大時代の友人、トットリ君(鳥取県出身でアダ名もまま)。

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 ゲームマニアの間ではずっと謎の人物だったと聞くが、彼とは当時、東高円寺のアパートで同居してたのでフィギュア制作を依頼されたいきさつは誰よりもよく知っている(詳しくは『ほぼ日』のサイトで)。

 余談だがトットリにはもうひとつアダ名が存在する。それは“トット・リー”。ブルース・リーのマニアでもある。

8月28日
 人魚のことばっかり考えていると、本屋で『日本の人魚伝説』 (髙橋大輔・著)というタイトルが目に飛び込んできた。摑んで即、レジに向かう。これ、マイブームの始まりにはとても重要な“レジスタンス活動”。己れに迷う隙を与えずレジに立つことで、“絶対好きに違いない!”と、自分洗脳していくわけだ。

 実は既に人魚グッズ(像高50センチ近くあるブロンズ像や、人魚型の栓抜きなど数点)を、よく確かめもせず通販で手に入れている。

 これで“好きになれなかった”とは言わせない。

『日本の人魚伝説』はとても面白くて一晩で読んだ。かつて『新TV見仏記』という番組で訪れた福井県小浜市、そこに伝わる八百比丘尼(やおびくに)伝説(人魚の肉を食べ不老長寿を獲得したという)がその本のテーマ。そういえばテレビロケの始まりは海岸沿いの広場にいた人魚像前からだった。

8月29日
 東京の北区王子『飛鳥山公園』内にも人魚像があることを知り行ってみた。小高い丘に遊具や静態保存されている都電、それに紛れるようにして人魚像はいた。経年劣化で所々、彩色が剥がれ落ちてちょっと不気味に見える。それに人魚だもの、陸での生活は辛かろう。修復されてない地方の仏像を見た時のよう、思わず手を合わせた。それにしても何だ、このクソ暑さは。公園内にあった売店を少し物色し、帰路についた。