「相手に踏み込みすぎない」お草さんの魅力
――お草さんはコーヒー豆と和食器を扱う「小蔵屋」を営みますが、お客さんと特別仲良くすることもなく、いつも静かに見守っています。そんな「相手に踏み込みすぎない距離感」がとても魅力的だと思いますが、これは吉永さんご自身の理想のあり方なのでしょうか?
吉永 そうですね。私にとって心地のいい距離というのが、お草の付き合い方なんだと思います。
「相手が大事だから」とギューッと抱き締めすぎると、お互い苦しくなりますよね。大事だからこそ、少しゆとりを持って「行きたいところには行って、帰ってきたくなったら帰っておいで」という距離感でいたいです。
好きなお店についても同じことが言えるかと。常連になっても初めて来たときのような距離感が保たれていて、でもそこに何か温かさがある……というくらいが心地よく感じます。
――このシリーズも、読者との距離がすごく近いというよりは、一定の距離を保っているようなイメージがあります。
吉永 物語の中でも、「小蔵屋」を通り過ぎていく人が多い。でも、だからといってお草との結びつきが弱いわけではないと思います。
ずっと昔に誰かにかけられた一言を、いくつになっても忘れないことって、意外とあるじゃないですか。それが、八方塞がりで苦しいときにふと思い出して、自分を立て直す力になる。私自身も、励みになってくれる人が滅多に会わない人だったりします。遠くで一生懸命やっているその人の近況がたまに聞こえてくると、それがしばらくエネルギーになっています。
――なるほど。今回の新作『故郷の青空』にも通じる部分ですね。
〈第2回に続く〉