「はっきりいって、大嫌いになりました」
地方都市の郊外に暮らす亜季子さん(40)は、夫婦でベーカリーを複数店舗営んでいる。マッシュルームカットがよく似合う、童顔の女性だ。小学生の子ども2人を育てている。
ふんわりと優しい笑顔で、ゆっくりと話す、癒し系の女性。誰からも好かれるだろうな、という印象を持った。隣町でギャラリーカフェを経営する房枝さん(52)とは、ひとまわり年の離れたママ友だった。豪快タイプで、面倒見のいい房枝さんのことは、子育ての協力から店舗経営のアドバイスまでさまざまな面で頼りにしていたというが、関係が悪化。
「明るくて楽しい房枝さんのことが、大好きでした。でももう、彼女からのアドバイスは必要ありません」。
姉のように慕っていた房枝さんはいつから切りたい「悪縁」となったのか? フリーライターの山野井春絵さんの新書『友達になって後悔してる』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。なお、本書は、プライバシー保護の観点から、インタビューに登場した人物の氏名や属性などを変更・再構成している。(全3回の1回目)
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彼女は子育て中のメンターだった
房枝さんとは、上の娘が6ヶ月のころ、彼女が経営するギャラリーカフェに行ったのをきっかけに、仲良くなりました。房枝さんは1歳児を背中におんぶしながら、大学生の女の子たちをアルバイトに使い、チャキチャキとお店を切り盛りしていました。その姿は、とてもかっこよく見えました。
産後は近くにある実家にいりびたっていたこともあり、なかなかママ友ができず、私と娘の2人だけで飲食店に入るのは、その日が初めて。少し緊張しながら、店に入る前から抱っこ紐の中で眠っていた娘を座敷席の座布団にそっと寝かせ、ランチセットを注文しました。ところがいざ食べようとしたそのとき、娘が急に目を覚まして泣き出したのです。仕方なく外へ出ようとすると、房枝さんがさっと娘を抱き上げてくれました。
娘はとても人見知りで、他人に抱かれると泣いてしまったものですが、房枝さんは別でした。自分も子どもを背負っているのに、笑顔で私に、「大丈夫、抱っこしているから、ゆっくり食べて。たまにはいいじゃない?」と言いながら、娘を抱いてずっとスクワットしてくれたので、娘はまた眠ってくれたのです。その姿に、思わず私は涙をこぼしてしまいました。
「わかりますよ、子育てって、孤独ですよね。いつでも来てください。ちょっと人と話して、お茶するだけでも気持ちがラクになりますから」
房枝さんは優しい笑顔でそう言ってくれました。私は食べながら泣きました。
