雨雲が居座る原因

 なぜ突如、今年になって、モンスーンジャイアが注目を集めるようになったのか。それは、例年はフィリピン東方海上の低緯度に発生することの多いこの巨大な渦が、今年は日本本土近くに現れたためです。そのため、この大きな渦が、湿った暖かい空気を日本列島に直接送り込むことになりました。こんな事例は、これまで見たことがありません。

坪木和久氏 Ⓒ文藝春秋

 加えて、日本特有の気象条件も、大雨が長時間にわたり降り続ける要因となりました。

 雨が降ると雨粒が蒸発して、空気を冷却します。北米大陸のように乾燥した地域では、雨粒はどんどん蒸発して、地面近くで冷やされた空気(寒気)が、暖かく湿った空気(暖湿気)の方へと流れていきます。寒気と暖湿気がぶつかり、暖湿気が持ち上げられることで、積乱雲の群が発生します。

ADVERTISEMENT

 北米大陸の場合、寒気と暖湿気の温度差は10度近くに及びます。その場合、寒気は暖湿気を押し上げながら、どんどん進んでいきます。これに伴い、雨雲も移動します。

 一方、日本はどうか。日本は基本的に湿潤な環境にあります。そのため、そもそも雨粒が蒸発しづらい。そうすると空気がそこまで冷やされないため、寒気と暖湿気の温度差は、最大でも3度ほどにしかなりません。その結果、寒気が暖湿気を押し上げながら進むことができず、その場所で均衡状態を保つことになる。つまり、雨雲もその場所に居座ってしまうのです。

 今回の千葉豪雨は、こうして雨雲が長期間停滞し、線状降水帯を形成したものと考えられます。結果的に、24時間降水量が300ミリを超える記録的な大雨となりました。

 なぜモンスーンジャイアが日本付近で発生したのかは、まだ分かっていません。ただ、もともと線状降水帯を発生させやすい湿潤な気候の日本列島に、巨大な渦が暖湿気を送り込み続けたことで、これだけの豪雨になったと言えます。

※約5500文字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』と『文藝春秋』2026年11月号に掲載されています(坪木和久「豪雨はもう異常気象ではない」)。
・アマゾン川3、4本分の水蒸気
・主体的な避難でしか命は守れない

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋PLUS」で購読できます
豪雨はもう異常気象ではない

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】昭和百年 美しき日本人50/特集 睡眠は最高の健康投資だ/田中眞紀子 高市早苗に問う

2026年11月号

2026年10月9日 発売

1350円(税込)

Amazonで購入する 目次を見る
次のページ 写真ページはこちら