転倒による骨折は、誰にでも起こりうるものだ。年齢を重ねるほど回復が難しくなって、そのまま介護が必要になることも多い。キャリアを重ねた著名人にも骨折に見舞われた人たちがいる。人前に出るのが仕事の彼らは、死活問題となりかねない事態をどう乗り越え、今なお現役を続けているのか。『笑点』でも長年にわたって活躍した人気落語家に聞いた。

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80代での「人生初の骨折」

 落語家の林家木久扇さん(88)の事務所に入るとすぐ、数段下りる階段がある。木久扇さんは手すりをつかみながらゆっくりと歩を進める。杖は普段は使わない。

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「こうして事務所に来ていただくとお分かりのように、すぐそこが街でしてね……」。55年間レギュラーを務めたテレビ番組『笑点』でおなじみの笑顔を見せ、語りだした。

林家木久扇師匠 Ⓒ文藝春秋

 木久扇さんが人生初の骨折をしたのは2021年、83歳の時だ。近所のスーパーで2リットルのお茶2本や惣菜などを買い、重い買い物袋を両手にぶら下げて事務所の隣にあるアトリエに戻ってきた。右手で鍵を開けるため、両方の買い物袋を左手でまとめて持ったら、ドアが開いた途端にバランスを崩した。

「左側にひねる感じでドーンと転んでものすごく痛かったですけど、自分では何が起こったかとっさにわからないんですね。痛い、痛いと言っていたら、事務所にいた家族が気づいてくれて、『脚が折れているんじゃないの?』と救急車を呼んだ。それで病院へ担ぎ込まれたんです」

 診断は左大腿骨骨折で、全治3カ月。そのまま入院し、2日後には人工股関節に置換する手術を受けた。その際、家族には車いすや寝たきりになる可能性も告げられた。

 幸い手術で痛みはまったくなくなり、すぐにリハビリに移った。1日1時間程度、歩行訓練や脚の筋肉を使う運動に懸命に取り組んだ。

 わずか1カ月後には“ペンギン歩き”ながら自力歩行できるまでに。医師からは「驚異的だ。普通の人とはモチベーションが違いますね」と言われたという。

 5月下旬に全治3カ月と診断されながら、1カ月で完治して6月下旬に退院。7月には高座や『笑点』の収録に復帰した。