公の場での説明には疑問が残る一方、SNSでは支持が集まる。高市首相にとって、これは一つの「成功体験」になったのではないか。そう考えると、その後のSNS重視の姿勢も理解できる。5月には内閣広報室が首相の動向を発信するXアカウントを試行開設。6月からは佐伯耕三内閣広報官の名前を前面に出し、報道への反論も含めて発信を続けている。なるほど、「SNS固め」に力が入るわけである。
内閣広報室は来年度予算に72億円を要求
東京新聞は、国会審議や記者会見など双方向のやりとりには後ろ向きだと批判される首相について、SNSなら「自身に都合の良い話題を一方向で発信でき、都合の悪い話題は避けられる」と指摘した(10月16日)。
ちなみに内閣広報室は来年度予算に今年度の約10倍となる72億円を要求。うち約59億円を政策アピール動画などに充てる計画だという。使うのは税金である。
さて、国内ではSNSを通じて自分の言葉を思い通りに発信できても、外交では発した言葉が相手国との関係を左右する。最後に紹介するのは、昨年11月の台湾有事答弁である。
日経新聞は「『戦略的あいまい』貫けず」と報じた。歴代の首相があえて曖昧にしてきた一線を越える答弁によって、日中関係は悪化した。しかし注目したいのは、国内では「質問したほうが悪い」と擁護する声が広がったことだ。質問は、首相就任前の持論を確認するものだった。政府の事前資料も、具体的な答弁を避ける方針だったという。
首相は後に、従来の政府の立場を超えたと「受け止められたこと」を反省点に挙げた。質問した側が悪い。受け止めた側が悪い。そういえば、G7欠席の説明でも業者の手配が間に合わなかったという話が出てきた。本人の説明にも、支持者の擁護にも「他責」がにじむ。
それでも、高市首相のはっきりした物言いは支持される。しかし、言葉が強いことと、説明に筋が通っていることは別だ。
さらに注目はそのあとだ。強い言葉を発するたび、説明や対応が新たな問題を呼んできた。
言葉を追っていたら、結局は政治姿勢の話になった。やはり神は細部に宿るのか。
