角川春樹が総監督をつとめた映画『星の教室』がまもなく公開される。今回、「最後の総監督」と銘打たれた本作は、夜間中学を舞台にした感動のヒューマンドラマだ。

 主人公の潤間さやかは、レンタルビデオ店でバイトをする20歳。いじめが原因で不登校になり、義務教育を終えられず、生きづらさを抱えていた。そんな時に、夜間中学の存在を知り、通うことに決める。

中学時代にいじめが原因で不登校となり、その傷を抱えたまま生きている潤間さやか(桜田ひより)。 ©2026映画「星の教室」製作委員会

夜間中学の取材で出会った、ひとりの若い女性の言葉

 原作は髙田郁の同名小説。もとは約25年前、髙田が原作を手がけ(川富士立夏名義)、みなみなつみの作画で発表した漫画『星の教室 ―今、夜間中学で―』で、2025年に改めて小説として刊行された。

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「髙田郁さんの原作を読んで、夜間中学の存在を初めて知りました。そして、この物語の主人公と現代の教育の問題がダブって見えてきたんです。この国ではこれからますます不登校が増えるだろうが、では、その受け入れ先はどこになるのか? そんなことを考えながら、これを映画にしようと取材を始めました」

写真=釜谷洋史

 角川は夜間中学に取材に出向いた。その際、卒業生たちが自分の思いをつづった作文を発表し、角川はその内容に大きな感銘を受けた。

「夜間中学の生徒一人ひとりの抱えている問題は、さまざまです。過去に不登校、いじめの経験があったり、在日外国人であったり中国残留孤児だったり、ヤングケアラーだったり……それぞれが大なり小なり傷や悩みを抱えている。今回、作文を書いてくれた人たちの中には、字が書けなかった人もいるけれど、それでも文章を書こうとする。そうやって前向きな心になれるのは、学校での授業というより、仲間同士のつながりがあるからなんです」

 そのなかで、ひとりの若い女性の書いた作文が、角川の目をひいた。

「彼女に会ってみると、夜間中学で学んだことをお返ししたいから、大学に進学して夜間中学の教師になりたいんだ、と話してくれました。私はそのことに感銘を受け、主人公の物語に組み込むことにしたんです」

 角川は2020年にも髙田の『みをつくし料理帖』を映画化し、監督を務めている。髙田の作家性を見いだしたのも角川で、『みをつくし料理帖』執筆の際には、女性に向けて時代小説を書くことを進言したという。

「時代小説の読み手は高齢層で、なおかつ男性が多い。そこに女性読者を増やしたい。その際のモチーフとして髙田さんに“料理”を提案したんです。グルメ小説を時代小説に置き換えればいい、とね」