「異次元緩和」に終止符、デフレは解消できたのか
植田総裁が就任して約1年後、2024年3月18~19日の金融政策決定会合で、日銀は、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況になったとの判断から、マイナス金利政策の解除を決めた。
金融市場調節の操作目標を無担保コールレート(オーバーナイト物)に変更し、それまでマイナス0.1%としてきた政策金利を0~0.1%程度に引き上げた。イールドカーブ・コントロールの撤廃や、ETF・不動産投資信託(J‐REIT)の新規買い入れの終了も決めた。
併せて、マネタリーベースの残高に関するオーバーシュート型コミットメントも公表文から消えた。これにより、「異次元」と言われた大規模緩和に終止符が打たれた。
決定会合の直前に連合が発表した春闘の第1回回答の集計結果では、ベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5.28%と、1991年以来33年ぶりに5%を超えており、そのことが政策転換の判断材料になったと植田総裁は記者会見で認めた。長らく日本を覆っていたデフレマインドがようやく解けて、賃金・物価の好循環が見え始めたことが確認されたのである。
消費者物価の上昇は、ウクライナ戦争の影響による輸入物価の高騰や円安がきっかけだったが、それだけで賃金が上がることはない。企業収益が空前のレベルに達し、しかも超完全雇用と言えるほどの状況が続いていたがゆえに、労組は賃上げを要求し、企業側もそれに応えたのだ。
政策金利は2024年7月に0.25%程度、翌2025年1月に0.5%程度、同年12月には0.75%程度に引き上げられ、植田日銀は金融正常化の道を歩み始めた。トランプ関税やイラン情勢の経済への影響を見極めるため、追加利上げは半年見送られたが、2026年6月には1.0%程度への利上げを決定した。
