2025年度も首都圏では5万人以上の児童が「中学受験(中受)」に挑戦した。受験熱を加速させるのは、教育環境へのニーズと、「わが子に最良の人生を」という親心。そんな熱量が高まるほどに影を落とすのが「ママ友」との関係だ。
昨日までの信頼関係が模試の結果ひとつで一変することも珍しくない。SNSでのマウント、合否による関係の断絶……親の理性を飲み込む感情の深淵が、そこにはある。
会社員の結衣子さん(43)も、長女の中受をきっかけにママ友と疎遠になった経験を持つ。相手は、中受を選ばなかったママ友2人。教育方針の違いに加え、思いがけない出来事が3人を分断した。いったい彼女たちに何があったのか?
フリーライターの山野井春絵さんの新書『友達になって後悔してる』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。なお、本書は、プライバシー保護の観点から、インタビューに登場した人物の氏名や属性などを変更・再構成している。(全2回の1回目)
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仲良しの中で「受験組」はわが家だけ
受験を経て中高一貫私立校に進んだ長女は、現在高校生。下の長男も私立男子校に進学しました。苦い思い出になってしまった、長女のときの経験をお話しします。憧れる芸能人の影響で、「最難関校を目指したい」と娘が大手の塾に入ったのは小3の冬のことでした。
ママ友の希さん、紀恵さんとは、子どもたちが幼稚園のときから、家族ぐるみのお付き合いをしてきました。希さんは3人の男児を育てる専業主婦。紀恵さんは一人っ子女児で、ファミレスで長くパートをしています。中受を選んだのはわが家だけ。
「大変だね、頑張って!」。気持ちの優しい人たちで、私はいつも励ましてもらいました。仲良しが受験組でないことは、かえって私にとっては気楽でした。
夏はキャンプ、冬はスキー。毎年、みんなで旅行に出かけました。最後に3家族で旅行したのは、娘が小5の夏休みです。2家族は3泊キャンプの予定で先に出発していましたが、わが家は塾の夏期講習があったので、中日1泊だけの参加。小5とはいえ夏期講習はなかなかハードで、私は焚き火の前でもつい、受験伴走の愚痴ばかりこぼしていたような気がします。
一方、娘は久しぶりのフリータイムに思い切り羽を伸ばしていました。幼馴染たちと野原を駆け回り、テントでトランプをするなど、大はしゃぎでした。
朝、テントで目覚めてすぐに、日課である算数のトレーニングテキストを行うように言うと、娘は膨れっ面です。ほかの子どもたちはすでに外で遊んでおり、楽しそうな声が響いていました。
「帰ったら絶対にやるから。今はみんなと遊びたい」
しかし私はそれを許しませんでした。なぜならまた翌日から夏期講習が再開し、帰宅した夜も夥しい量の宿題をこなす必要があったからです。算数のトレーニングだけは、朝やっておいた方があなたのためだと言うと、娘は突然、狂ったように泣き出しました。
