プロ野球の読売ジャイアンツは、新監督に松井秀喜氏の就任を発表した。スポーツライターの広尾晃さんは「監督になる積極的な理由などないはずだったのに、あえて長嶋氏との約束を守ったという物語は非常に麗しい。だが、松井氏を取り巻く状況は順風満帆とはいえない」という――。
ドラフトでの強行指名という伏線
2026年10月23日、巨人の新監督に松井秀喜氏が就任することが発表された(以下敬称略)。巨人は、その前日の22日に行われたドラフト会議で、アメリカ球界挑戦を公言している横浜高の好投手・織田翔希を1位で単独指名した。いわゆる強行指名だが、果たして勝算があるのか、いぶかしむ声が大きかった。しかし翌日の新監督発表で、「伏線」の回収ができた印象だ。これから「松井秀喜」を前面に押し出し、織田を全力で口説きにかかるだろう。
巨人は1934年12月に「大日本東京野球倶楽部」として創設された、日本最古のプロ野球球団だ。初代監督の三宅大輔から数え、松井は16人目、21代目の監督となる。NPB(日本野球機構)時代の松井は屈指の強打者として知られたが、野手出身の監督は、三宅大輔、浅沼誉夫、中島治康、三原脩、水原茂、川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、原辰徳、高橋由伸、阿部慎之助に続いて12人目となる。まさに満を持しての就任と言っていいだろう。
求められるスター性
しかしながら、監督就任には、巨人ならではの複雑な事情があった。今季、開幕時点での監督は阿部慎之助だった。阿部は現役時代にMVPも受賞し、2000安打も記録するなど十分な実績を残し、2023年オフに監督就任。翌2024年に4年ぶりのリーグ制覇を飾った。しかし、3年目のシーズン途中である2026年5月25日、自宅での長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、翌26日に監督を辞任する。
巨人は急遽、橋上秀樹オフェンスチーフコーチを監督代行に据えた。橋上は阿部と同じ安田学園高出身。ヤクルトに入団後、日本ハム、阪神でプレーしたが、通算安打数は215本に過ぎず、阿部のようなスター選手ではなかった。NPBでコーチ歴は長いが、監督経験はなかったため、その采配は未知数だった。
