世界を熱狂させる多くのゲームを生み出してきた桜井政博(1970~)。長年の親交があり、元週刊ファミ通編集者の永田泰大氏が綴る。

◆◆◆

「間口の広さ」と「奥深さ」

 まず桜井政博の特別さをキャッチーに述べるなら、「世界で新作ゲームが待ち望まれている日本人ランキング」をつくったら1位に輝くのが彼である。

ADVERTISEMENT

 桜井政博はゲームを作る人で、代表作『大乱闘スマッシュブラザーズ』(『スマブラ』)シリーズの累計売上本数は全世界で約7700万本。しかし彼の非凡さは数字よりもその制作の姿勢にある。桜井政博のゲーム作りは徹底的だ。

桜井政博氏が生み出した『星のカービィ』は大ヒットコンテンツに成長。ゲームのキャラクターをテーマにした「カービィカフェ」も大人気 ©GC Images/ゲッティ/共同通信イメージズ

 デビュー作は1992年の『星のカービィ』で、発売されたとき彼は21歳だった。開発において彼はゲームのディレクションに限らず、キャラクターのグラフィックまで描き起こした。作品にまつわるあらゆるものを可能な限り手掛けるという彼の徹底したスタンスは当時から一貫している。

『星のカービィ』は普段ゲームを遊ばない人にも楽しめることをコンセプトにしていて、その間口の広さは後に桜井が手掛ける全作品に通じる。一方で「遊び込んだ先に奥深さがある」のも桜井作品の大きな魅力で、その間口の広さと奥深さの両立を徹底的に追求したのが代表作の『スマブラ』シリーズである。

21歳で『星のカービィ』をリリースした桜井政博氏(本人提供)

『スマブラ』は参加者に実力差があっても強い人がずっと勝ち続けるとは限らない。偶然性や相性といったゆらぎの要素を巧みに組み込む。競技的な厳密さが求められる格闘ゲームにそのゆらぎは本来歓迎されないが、『スマブラ』はそれをゲーム本来の楽しさに昇華させて見事に成立させている。だから『スマブラ』は初心者が夢中になる一方でゲーマーが集結する世界大会も開かれる。