――現場にはマネージャーもついていると思うのですが、それでは監督との間に入るのは難しいのでしょうか。
小松 マネージャーだと、どうしても役者側の立場になります。そうすると、役者対監督という構図になりかねないんですよ。
私自身はマネージャーに「カメラより前には来ないで」と伝えていました。衣装さんにタオルを持っていてもらい、カットがかかったらすぐ体を隠す。カメラの角度が気になったら、自分で交渉したり、体の向きを変えたりしていました。本来なら芝居に集中したいのに、どこが映るかを自分で気にしなければならなかったんです。
「特別扱い」になってしまう塗れ場シーン
――私は調べていて驚いたのですが、濡れ場というのは基本的にはあまり監督が演出を入れないものだそうですね。
小松 入らないことが多かったですね。もちろん、手をどう動かすかまで細かく指示する監督もいますが、私が経験した現場では「じゃあ何分、このシーンは欲しいです。絡んで最初は男性が上で、次は女性が上」といった大まかな説明だけのこともありました。でも、それだけじゃベッドシーンにならないじゃないですか? キスをどうするのか、手をどこに置くのか、分かりませんよね。そこは私の時代はフリー演技でした。
――そんな中、漫画家の内田春菊さんが監督を務めた映画『連結部分は電車が揺れる 妻の顔にもどれない』の撮影では絵コンテがあって、すごく助かったそうですね。
小松 絵コンテがあると全然違いましたね。次に何を撮るか、みんなの頭の中に同じ絵があるんです。準備も早いし、演じる側も「次はこうすればいいのか」と分かっているからスムーズに終わる。濡れ場だから特別扱いするのではなく、ほかの芝居と同じように段取りを決めればいいんですよ。
昔は濡れ場があると「この役者はどういう芝居をするのかな」とスタッフが見ているような現場もありましたから。
ただここ数年は違うと思います。インティマシーコーディネーターがいる現場では濡れ場には絵コンテが必要であることは必ず伝えますんで。今までのやり方に慣れた人の中には、絵コンテの用意をお願いしても、なかなか納得してくれない人もいるようですけれど。

