生徒に声を奪われました

 小川 この前先生とお話ししていたとき、先生がハスキーボイスになった理由を話されてましたよね。

 石井 あなたらの担任より前、3年生を受け持ったんでございます。そのクラスの生徒が大変で……。

教師現役時代の哲代さん(最前列の左から6番目)と小川教授(最後列の左から5番目)

 小川 お辞めになった前の担任の先生が、独自の自由放任主義の教育方針で、そのクラスの子どもたちは遅刻や早退をするのは当たり前で、授業中でも教室内を走り回ったりしていたそうですね。

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 石井 はい、授業中、勝手にお便所に行かれるんでございます。それも、人の邪魔をしいしい出ていってね。好きなことをしょうちゃったですね。

 小川 それで子どもたちに大きな声で注意をしすぎて……。

 石井 生徒に声を奪われました(笑)。前の先生のときは、貧しい家は給食費を持ってこんでもええってことになっとって、払っていない子が10人くらいおったんです。

 でも私は「タダで食べるのは人としてよくない。持ってこられるだけでいいから持ってきなさい」と、毎日5銭、2銭と、持ってきた分の出納帳をつけて「この月はあなたのお金で給食が食べられたよ。よかったね」って、やっとりました。

初の著書『102歳、一人暮らし。哲代おばあちゃんの心も体もさびない生き方』が17万部を超えて話題に ©文藝春秋

 小川 足りない分は、石井先生が自腹で補填したこともあったそうですね。そうやって、人間は尊厳を持って生きなければいけないと、教えられていたんだと思います。

 石井 あとね、クラスの皆で廃品回収をして貯めたお金で時計を買うたんです。代金が少し足らんかったんですが、時計屋さんが快くおまけしてくれまして。それで、「自分たちが稼いで買った時計なんじゃけえ、この時計の刻む時間は守らにゃあいけん」「何時になったら机に着く」「何時になったら出て遊ぶ」と教えたら、子どもらが時間を守るようになって、ちゃんと勉強しだしたんです。私の手柄話(笑)。

 小川 先生は、そういう工夫をされるんですよね。頭ごなしに「やっちゃダメだ」じゃなくて。

 石井 あなたのクラスはいいクラスでした。優しい子ばかりでね。

※全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(石井哲代×小川長「歌う哲代おばあちゃん103歳!」)。

文藝春秋

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歌う哲代おばあちゃん103歳!

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