百寿者が教える「年は取れば取るほど幸せになる」

広瀬 信義 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター共同研究員

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 “幸せ感”が高まっていく、百寿者に見習いたい境地とは

 100歳を超えた長寿の人は“百寿者(センテナリアン)”と呼ばれます。

 私はこれまで約1000人の百寿者と会い、会話し、交流してきました。その人が生きてきた時代の思い出や、現在の日常生活の詳細を伺うとともに、医学的な研究も行い、科学的根拠に基づく「健康長寿を実現する要因」を探っています。

 100歳以上の高齢者は9万9763人(2025年9月1日現在・住民基本台帳)。初めて1万人を超えたのは1998年で、それ以降も右肩上がりで増加し続けている。

 広瀬氏は百寿者研究のトップランナーとして知られる。もともとは慶應義塾大学医学部の老年内科医だったが、1992年から百寿者の研究に取り組み始めた。2014年には医学部内に「百寿総合研究センター」が設立され、特別招聘教授に。退官後の現在も共同研究員として百寿者に対する調査を続けている。

 百寿者を通して見える、長寿を実現し、老後を幸せに暮らすための心のありようとはなんだろうか。調査の過程でわかってきたのは、「人は80歳を過ぎると、『老年的超越』に向かって幸せ感を高めていく」ことだという――。

広瀬信義氏 ©文藝春秋

「老年的超越」とは、スウェーデンの社会学者、ラルス・トルンスタム教授が1989年に提唱した概念です。

 つまり、人は年を取ると、それまでの人生における「物質主義的で合理的な価値観」を越え、おカネや地位などへの執着が薄らぎ、自己中心的な考え方が薄まり、見栄もなくなり、自分の存在が過去から未来へと至る大きな流れの一部にすぎないと感じるようになるというのです。

 年を取れば、身体の衰えによって昔はできたことができなくなったり、いろいろな不都合や制約が生じます。が、それを不満に思うことなくあるがままに受けとめ、小さなことにも幸せを見出すことができるようになる。つまり、年を取れば取るほど幸福になれる。

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source : 文藝春秋 2026年8月号

genre : ライフ ライフスタイル