「気が向いたらお茶を5口。自己流体操も欠かしません」
私の店、「理容ハコイシ」は昭和28年に開業しましたから今年で70周年。おかげさまで106歳の今も、月に何度か店に立ちます。
お得意さんたちは90歳を超える方も、小学校へ上がる前からずっとはぎって(*栃木弁で散髪)いる方もいます。私が留守の時など、店と繋がった自宅の居間で待っていてくれるんです。有り難いことです。
この頃は「テレビで見て、ぜひ切ってもらいたい」と遠くから来られるお客さんも増えました。一昨日には下野市から94歳のお父さんが娘さんの運転でいらっしゃいましたよ。明日も取手からお客さんが来られるようです。
取材もしょっちゅう。今度、慶應大学病院の教授が来て、どうしてこの歳でも健康なのか、調べんだそうです。いろんな人が来ますから、毎日退屈しませんねえ。
箱石シツイさんは、大正5(1916)年、栃木県那珂川町の谷川(やかわ)集落で生まれた。本誌(12月号)の発売日、11月10日にちょうど107歳の誕生日を迎える現役の理容師だ。
100歳を超えた頃から取材が増え始め、東京オリンピックの聖火ランナーを務め話題に。9月にも、100年前の関東大震災の経験者としてNHKや新聞から取材を受けた。
編集部が訪ねると、会話には補聴器が必要だが、受け応えは実にテキパキと的確。肌ツヤもよく、背筋もピンと伸びている。洗濯や掃除も自ら行い、デイサービスも拒否。お客さんの肌にカミソリを当てる姿は百寿者とは思えない。
聖火ランナーで注目された
長女・充子が83歳、長男・英政が80歳。2人とも子どもの頃はかわいい顔してたんですが、いまじゃすっかり爺さま婆さまになって。孫が3人、ひ孫が4人おります。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2023年12月号