『世界で最後の愛しい娘!』

 次も、B級のジャンル映画に思わせておいて、感動が待ち受ける佳作だ。今度は韓国映画。

 突如として人々がゾンビに変貌、人間を襲い始める。政府は感染拡大を防ぐためにゾンビは見つけ次第の抹殺を命令。一人娘がゾンビに感染したことを知った父親は、田舎で一人暮らしをしている老母のいる実家に娘を隠そうとする。

『世界で最後の愛しい娘!』

 愛しい人がゾンビになってしまった――という設定自体は、年に1度は観るくらいにありきたりなものだ。だが本作は、いくつもの工夫を重ねることで、単なるゾンビ映画ではない、人間ドラマとしての完成度を高めることに成功している。

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 まず目を瞠るのは、容赦ないゾンビ駆りが奏功したことで、世の中からゾンビがほとんどいなくなり、大半の人間が既に平和に暮らしている展開だ。そのために、「市民生活を脅かす、排除すべき対象」としての娘の存在が際立つことになり、彼女を隠そうとする父親やその母の奮闘がコミカルながらも緊張感に貫かれることに。

 また、父親の職業を動物園の飼育員としたのも上手い。彼は獰猛な野生動物たちを手懐けてきたように、ゾンビとなった娘にも接するのだ。そして、その弛まぬ努力が実を結び、徐々に娘は知性を取り戻していく。その愛情あふれる2人の姿はほのぼのと美しい一方、「他人に見つかって抹殺されることは、絶対にあってはならない」という危機感を高める効果ももたらしている。

 さらに、なぜ父親は一人で娘を育てているのか――という謎の使い方も見事だ。その背景が終盤になるにつれ明らかになっていき、これが親子のドラマやサスペンス性を上手く融合。緊迫したクライマックスとともに、大きな感動がやってくる。

 オフビートなコメディに始まり、人情劇を経て、後半で一気にシリアスに畳みかける展開は、韓国映画の定石。本作は、その一つ一つが上手く作用し、極めて満足度の高いエンターテインメントたらしめている。何より、ラストカットが素晴らしい。こういう終え方は、日本だけでなくハリウッドもマネしてほしいものだ。

『世界で最後の愛しい娘!』
監督:ピル・カムソン/出演:チョ・ジョンソク、イ・ジョンウン、チョ・ヨジョン、ユン・ギョンホ、チェ・ユリ/2025年/韓国/113分/配給:クロックワークス/© 2025 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & STUDIO N. All Rights Reserved./11月13日(金)よりロードショー