『大富豪になるための正しい殺し方』

 最後は、アメリカのブラックコメディ。

 大富豪の一家を追放され、貧しい中で母親に育てられた男が主人公。成長した彼は、一族の財産を独り占めするべく、一人一人を完全犯罪で殺していく。

『大富豪になるための正しい殺し方』

 本作もまた、設定だけから受ける印象と実際に観ての感想がかけ離れた作品だ。設定自体はハードボイルドに思えるが、いざ観てみると全くそうではない。大藪春彦の描くような、クールに復讐を重ねていくキャラクターを想像するかもしれないが、その正反対なのだ。グレン・パウエルが演じているだけあってパッと見はカッコイイし、言葉巧みに富豪たちに近づく様は実に狡猾。だが、これもグレン・パウエルらしく、間の抜けたこともあれば、感情的にもなり、三枚目的な要素が多分にあるのだ。

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 そして、物語の軸になるのは、2人の女性。1人はセクシーな幼馴染・ジュリア。もう1人は公立学校で教師をするルース。この2人が、さまざまな形で主人公の計画の前に立ちはだかることになる。ジュリアを演じるのがマーガレット・クアリー、ルースはジェシカ・ヘンウィックとキャスティングもバッチリ。2人の間でオロオロするグレン・パウエルもさすがで、中盤はラブコメ的な楽しさもある。

 徹底して富と名誉にしか興味のない俗人のジュリアと、富や名誉よりも小さな幸福を望む知的でリベラルなルース。主人公は全く悩むことなくルースを選ぶのだが、ジュリアが疫病神のようにつきまとい、やがて主人公を破滅に追い込む。

 本作も、ラストが素晴らしい。「全てを失い、本当に大事なものに気づく」という、ハリウッド映画の王道的な終わり方なのだが、その「大事なもの」に捻りが効いているため、「おっ、そう来たか」と思わずニンマリしてしまうのだ。通常なら、復讐や富ではなく、人としての温もりや優しさ――となるところだが、はたして。そこは、ご覧になってご確認いただきたい。

『大富豪になるための正しい殺し方』
監督・脚本:ジョン・パットン・フォード/出演:グレン・パウエル、マーガレット・クアリー、ジェシカ・ヘンウィック、ビル・キャンプ、ザック・ウッズ、トファー・グレイス、エド・ハリス/2026年/イギリス、フランス/105分/配給:KADOKAWA/© 2026 / STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved./11月13日(金)よりロードショー

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