聴いてた音楽? 演歌ぐらいかな。あと軍歌
――ある意味での「保守の歴史観」は渡部昇一の本がきっかけだったのでしょうか。
田母神 まあ、そうでしょうね。他に読んでいたのは、関嘉彦さんの著作。民社党の理論的支柱のような方で、都立大の先生をされていた。『社会主義と自由』だったかな、読みましたね。あとはカーネギーです。『道は開ける』『人を動かす』。いずれも名著ですが、これも幹部学校で紹介されて読みました。
――田母神さんは元々理系で、福島県立安積高校でも理系クラスだったんですよね。
田母神 そうです。高校に入ったのが昭和39年、東京五輪の年。日本が高度成長に入ろうとしていた頃で、身近なところでいうと家電の業界が華やかに見えたんですね。それで技術者になりたいと漠然と思っていたんです。ところが親戚に自衛官がいたこともあってか、父が「お前は防衛大学校に行け」と。それに反抗することもなく、まあ自衛官の道に入ったわけです。
――その頃だと、どんな本を読んでいたんでしょうか。
田母神 小説を読むくらいでしたよ。しかも松本清張とか、そういう推理小説みたいのばっかり読んでいた。「歴史観」に関わるようなものは、今考えれば読んでいませんね(笑)。
――音楽はどうですか?
田母神 聴いてた音楽? あんまりないですね。演歌を聴いていたくらいです。誰が好きとかはなかった。春日八郎、三波春夫、三橋美智也、村田英雄の時代ですよね。女性だと美空ひばり、島倉千代子。
――軍歌はいかがでしたか?
田母神 ああ、軍歌はけっこう好きでした。歌詞がわからなくても、「よし、やるぞ」って気になるなって思ってました。
――防大に入って軍歌と親しくなった感じですか?
田母神 そうですね、防大や自衛隊では軍歌習いますからね。でも、うちの父親なんかは隣近所の人と軍歌をよく歌ってましたよ。『同期の桜』だとか、いい歌だなと思って聞いてましたけど。今でも軍歌好きですよ。
――他にどんな曲が好きですか?
田母神 今は『加藤隼戦闘隊』とかですね、『麦と兵隊』。あと『歩兵の歌』、『若鷲の歌』など。
――なるほど、『歩兵の歌』は以前、「チャンネル桜」に出られた時に、カラオケ大会で歌われていましたものね。
田母神 ああ、よくそれをご存知で。
――歌には自信ありますか?
田母神 私はね、歌はね……、うまいですよ(笑)。
私の原体験「共産党はバカだから」
――防衛大学校時代の話をもう少しお伺いします。入学されたのが昭和42年、1967年のことですから、防大時代に70年安保運動が起きていますよね。同世代の学生が安保反対を唱えている様子を、田母神さんはどのように眺めていたのでしょうか。
田母神 何を騒いでいるんだ、バカだなって思って見てました。夏休みに帰省すると、普通の大学に入った高校の友達と会いますよね。すると、たった3ヶ月大学に行っただけで、やれマルクスがどうしたとか言うやつがいるわけです。私はちょっとカチンときて、「なんだお前、因数分解もできなかったのに、よくそんなことがわかるな」って言ってやりましたよ。
――なんでカチンときたんでしょうね。
田母神 かぶれてる感じがいやだった。私は昔から、左の共産主義的考えに毒されることはなかったから余計に。うちの父はいつも「共産党はバカだ」って言っていた。なんでかと言うと、実家の近くに町議会議員にいつも立候補する共産党の人がいたんですよ。選挙に出ると必ず落ちるんだけど、必ず出る。いつだったか聞いたんです、父に。「あの人は、なんで落ちるのがわかっているのに選挙に出続けるんだ」と。その答えが「共産党はバカだから」。これは、私の原体験といえば、原体験なのかもしれませんね。