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ウケる喜びよりも「美学」が先に来てしまう

吉田 僕が言うのもなんだけど、大学の落研出身の落語家が増えたこともあるかもしれない。なにしろ研究しちゃってるんだからね。ウケる喜びや人気者になりたいハングリーさよりも、美学のようなものが先に来てしまう。

木りん 落語の芸術性の追求というような?

吉田 そうそう。それがテレビのリズムと合わないんです。テレビ番組をつくる側からすれば、「そういうこだわりのある人に頼りたくない」っていう気持ちもあったんですね。

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木りん なるほど。

©杉山秀樹/文藝春秋

吉田 そして21世紀に入って、またテレビ界の空気は変わりました。ひな壇のバラエティが飽きられ始めて、今は身内や同業者同士が群れて楽屋話をしているような番組が主流になっています。芸人が占めていた司会の席も、「今でしょ」の林修さんや池上彰さんのような、それぞれの分野で価値観をきちんと持っている人が起用されてきた。坂上忍さんだって俳優ですよね。これは違うフィールドで一流であるということが、テレビの中で発言することができる意見の持ち主であるということです。

木りん はい。

吉田 だから、今は落語家が司会をやる夜明け前なんですよ。

木りん ええっほんとですか。

吉田 もちろん。今はただ娯楽を提供するのではなくて、そこに何か意味がある、伝えたいものがあるバラエティが求められていると思います。そういう番組に、落語というフィールドで一流で、しかもひとりで何でも出来るプロデューサー的感覚のある落語家だったら、私はぴったりだと思う。

木りん 確かに落語家はひとりでどこへでも行って何でもやりますからね。

落語家たちの夜明けは近い!

吉田 ただテレビに出る落語家が意識しないといけないのは、テレビはずっとトップヘビーだということ。映画でも演劇でも落語でも、つかみがあって、ダレ場があって、それで最後に盛り上げる。そうすると、先にお金を払った分の満足を得てお客さんは帰るでしょう? でもテレビは違う。

木りん 最初からトップギアで行かないといけないということですね。

吉田 そうしないとチャンネル変えられちゃうからね。そこさえ意識していけば、木りん君の夜明けは近いぞ!

木りん 今日はありがとうございました! 頑張ります!