文春オンライン

“期待の二ツ目”林家木りんが直撃 伝説のテレビマンが語る「落語家の夜明け」

note

 落語人気というけれど、ほんとに落語家は生き残っていけるの? 平成生まれ、”期待の二ツ目”林家木りんが、名バラエティを生み出してきた伝説のプロデューサーにして現在はワタナベエンターテインメントの吉田正樹会長に聞く「これからのテレビと落語家のこと」。

©杉山秀樹/文藝春秋

落語家って『笑点』を除けば今あまりテレビに出ていない

木りん 今日はバラエティ番組の名プロデューサーでいらした会長に、ぜひいろいろお話を伺いたくて参りました。

ADVERTISEMENT

吉田 ほう。なんでもどうぞ(笑)。

木りん 僕は林家木久扇師匠に入門して9年、二ツ目になって5年。これからテレビやラジオやいろんな仕事をやっていきたいと思っています。ですがふと気づくと、落語家って『笑点』を除けば今あまりテレビに出ていないような気がするんです。僕が幼い頃には、もっともっと落語の番組があって、司会者にも落語家が多かった。どうしてこうなっているのかと思いまして。

吉田 確かに。いまは空前の落語ブームなのに、テレビなどではあまり落語家はフィーチャーされていないですね。

木りん 落語ブームというのもあまり実感としてはないんですけれど。

吉田 いやいや私たちの世代の感覚では、大変なブームですよ。私も大学の落語研究会の出身なんだけど、90年代以降、落語はずっと冬の時代が続いていたわけだから。いまは確かに寄席にはお客さんがよく入っています。けれど、落語界からは大スターが出なくなってしまった。かつては確かに綺羅星のごとき落語家たちが、テレビを席巻していました。林家三平師匠、月の家円鏡師匠(橘家圓蔵)、古今亭志ん朝師匠、立川談志師匠。桂米朝師匠がワイドショーの司会をしていたり、米朝寄席、(桂)枝雀寄席など落語だけを見せる番組もあった。バラエティ番組にもたいてい、落語家がキャスティングされていました。それがなくなってしまったのはどうしてか。それはテレビ史と関わってきます。いいのかな、こんな話で(笑)。

木りん はい、ぜひお願いします!

漫才ブームが落語家を「駆逐」した

吉田正樹会長 ©杉山秀樹/文藝春秋

吉田 80年代より以前は、テレビでは歌手がいちばん偉かったんです。映画俳優も偉かったけど、テレビを下に見ていたからあまり出演しなかった。たとえば歌手がいろんなことに挑戦するから、『かくし芸大会』という番組が成り立っていたわけですね。そういう歌手がいちばんの番組作りで、司会者は誰だったかというと、主にアナウンサーがやっていた。宮田輝さんとか高橋圭三さん。でもくだけた番組ではちょっと固すぎるから、しゃべりの得意な落語家が司会をするケースがよくあったんですね。

 そこに『11PM』のような文化、カルチャー路線の番組が出てきて、大橋巨泉さんや藤本義一さんのように、作家やライターが司会をする時代が来るんです。さらに漫才ブームがやってきた。これがテレビの落語家を駆逐してしまったわけです。

木りん そうか!