ビタミンが流れ出ないという利点も
それでは電子レンジが役立つ時はないのかというと、そんなことはない。短時間で高温加熱を利用できるのは、ビタミンを豊富に含む野菜類だ。
「ゆでるなど長時間火にかけると、水溶性ビタミンが流れ出てしまいます。電子レンジ加熱は逃げる水分が少ないため、水溶性ビタミンを保持しやすい。ビタミンが豊富なブロッコリーや葉物などの野菜類は、基本的に電子レンジ調理がいい。
ただし菓子メーカー、カルビーらの研究で、もやしを電子レンジで加熱調理すると、5分経過後からアクリルアミド(AGEの一つ)の生成が見られるため、やはり電子レンジは“短時間”が原則」(望月氏)
忙しい現代社会ではもはや電子レンジなしの生活は考えられないが、ちょっと時間があるときは電子レンジの“加熱”ではなく、スイッチをひねって“オーブン”に切り替えよう。
「マイクロ波加熱は内部の細胞から破壊されていくため、特にタンパク質は性質が変わりやすい。オーブンのような焼く加熱なら表面から細胞が徐々に壊れていくため、食品本来の性質を壊しにくい」(伊達氏)
元厚生労働省健康局栄養・食育指導官で、現在は和洋女子大学教授の古畑公氏は、「食品に対して作用が優しいのは、蒸す、煮る、焼く、揚げる、電子レンジ加熱の順」と話す。
「5つの調理法の中で温め方が集中的でなく、蒸気によって四方八方から平均的に温められ、かつ栄養価も失いにくいのは蒸す方法。ただし、時間がかかる」
前述した揚げ物や惣菜も、陶器に移して“蒸す”方法での再加熱がおすすめだ。
“手軽にチン”の前に、その必要性と手段をいま一度見直したい。