医療用ウィッグを使ってみたら
──そういう対策などは、病院で教えてくれるものなのですか。
矢方 病院にもウィッグの業者さんが来て、個別の相談に乗ってもらえる機会はあったんですが、時間や日程がなかなか合わなくて行けなかったんですよ。とりあえずファッションウィッグを選んだんですが、これで生活するのは限界があるな、と思っていた時に、全国福祉理美容師養成協会が運営している「アピアランスサポートセンターあいち(あぴサポあいち)」という施設を紹介してもらい、新しいウィッグを作ってもらいました。
──それはどんな施設ですか?
矢方 がん患者の外見に関するサポートをしてくれる場所で、美容師やネイリスト、エステティシャンの方たちが、ウィッグやネイル、つけまつ毛など、病院とは違った面でサポートをしてくださるんです。それまでは、誰にも相談できなかったウィッグの汗やにおい対策についても、そこで初めて相談できて、すごく嬉しかったです。「わき汗パッド」を使うワザを教えてもらったんですけど、ウィッグの中の汗をかきそうな部分に貼っておくと、頭の中の汗を吸い取ってくれて、交換すればさっぱりするんですよ。それまで頭から汗が流れ出てくる感じだったのがなくなり、“汗問題”から解放されました。
──「病気を治す」ことが目的の病院とは、また違った面でのサポートがありがたいですね。
矢方 病院で紹介してくれる医療用ウィッグは、すごくいいものなんですが、性能がいい分値段が高くなってしまうのと、デザイン的にいまいちというイメージがあって、私は手が出なかったんですよね。そういう話も「あぴサポあいち」さんでしたら、美容院が作ったという医療用ウィッグを紹介してくれました。人毛100%で、色も長さも自分の好みにアレンジできるウィッグで、コテで髪の毛が巻けるんですよ! コテをあてる前にトリートメントもできるし、つや出しのワックスもつけられると聞いて、衝撃的でした。
──自分の髪と同じように扱えるんですね。
矢方 シャンプーやトリートメントも、それまで自分が使っていたのと同じものが使えると聞いて、洗い方も教えてもらいました。ファッションウィッグは、乾かすのにすごく時間がかかるんですけど、人毛だと乾くのも早いので、助かってます。今までは寝ぐせがひどくて、朝必ずシャワーを浴びて髪の毛をセットしてから出かけていたのが、今は、朝起きてウィッグを被って外出できるので、ヘアセットの時間がむしろ短縮できたかも(笑)。このウィッグに出会って、「今しかできないので楽しもう」と、やっと思えるようになりました。
やかた・みき/1992年生まれ。名古屋・栄に誕生したアイドルグループ・SKE48のメンバーとしてデビュー。「チームS」のリーダーを務めた後、2017年2月に卒業。現在はZIP-FM 『SCK』のアシスタントのほか、テレビ番組やイベントでレポーターやナレーターとして活躍するほか、自身の経験をもとにした講演や番組出演など、幅広く活動している。
写真=末永裕樹/文藝春秋