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勝てる戦ではない、それはわかっていた

――そもそも石破派だから石破支持というのはわかるのですが、改めてその理由を伺えますか。

斎藤 今日の私があるのは石破さんが初当選直後から私に目をかけ、引き上げてくれたから。その恩に報いたいという気持ちが第一ですよ。私が初当選したのは2009年の政権交代選挙。つまり自民党は野党に転落した。それで当選して40日しか経っていない時に、政調会長だった石破さんから電話がかかってきて、「環境部会長をお願いします」って指名されたんです。初当選間もない1年生議員に、しかも当選後40日ですよ、そんな人間に部会長を任せるなんて驚いた。そこで評価されて当選2回目で与党に戻った時に農林部会長になり、大臣にまで進んだ。もちろん閣僚にしてくれた安倍総理にも大変な御恩があるわけですが、全てのベースを作ってくれたのが石破さん。

環境政務官時代の写真や、農水相で入閣した時の写真が飾ってあった

――野党時代に抜擢してくれたのは、まさに御恩ですね。

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斎藤 だから石破さんの正念場に「今閣僚なのでちょっと応援できないんですよね」では私の美学に反する。しかも、勝てる戦ではないこともわかっていた。だからこそ、なおさら逃げるわけにはいかない。

組織内の人間関係を優先させようという心理が「失敗の本質」

――斎藤さんは経済産業省時代に『転落の歴史に何を見るか』という、日本が戦争に突入してしまうまでの「失敗の本質」に迫った論考を出版されています。主に日本の組織に問題があると論じているわけですが、古びないテーマです。

斎藤 増補版が文庫でも出てありがたいんですけど、しかしこの問題が未だに古びないっていうことこそ、問題だよね。

――あらためて、なぜ日本の組織が「転落の歴史」の要因なのか教えてください。

斎藤 つまりは「組織内の人間関係を優先させようという心理が強力に働く」点が日本的組織の一番の弱点なんです。1905年、日露戦争の奉天会戦以降、帝国陸海軍には、この問題があったと考えています。文明論めいて聞こえるかもしれませんが、日本人の組織観には聖徳太子の「十七条の憲法」以来のDNAがあるんだと思うんです。

『増補 転落の歴史に何を見るか』(ちくま文庫)

――和をもって貴しとなす。

斎藤 戦いが起こり、敗者が出ないようにすることが大事だと。なぜなら、敗者は祟る、天変地異を起こす、そう考えられていたから、仏教よりも天皇よりも優先して「和をもって貴しとなす」を第一条に掲げた。この意識は今も残っていて、「喧嘩両成敗」なんてこと、言うじゃないですか。ことの善悪を追求するよりも、まず喧嘩そのものが悪という発想は、我々の心の奥底に今もあるんです。