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昔から官僚は「人事権のあるところに媚びるもの」

――まさに斎藤さんに辞表を迫った議員が生まれる土壌がそこにある気がしますが、安倍政権が「総理のお友だち」ばかりで、忖度政治を蔓延させていると批判されているのはまさに、組織の合理性よりも「仲間意識」を優先しすぎている現れだとは思いませんか?

斎藤 官僚に関してだけ言うと、少なくとも安倍さんが優秀な官僚を近くに集めるやり方をしていることは事実。私はこのことはいいことだと思っています。その際に人事権を使うことは悪いことではない。

 

――ただ、それによって周りが忖度しすぎているという意見もありますが。

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斎藤 マックス・ヴェーバーの『職業としての政治』にもありますが、昔から官僚は人事権のあるところに媚びるもの。だからまず、正論を堂々と述べ、忖度なんてしない官僚を作る道が一つ。もう一つは、そういう忖度しない官僚を大事にする政治家を生み出すこと。その両方の道を切り開いていく意識が双方になければならない。

内閣人事局を廃止しても、媚びを売る相手が変わるだけですよ

――官邸が官僚人事を握ることになった、内閣人事局制度。これについてはどうお考えなんですか? ここに人事権がある限り、官僚は政権に媚を売り続け、忖度し続けることになると思いますが。

斎藤 仮に内閣人事局を廃止して、従来のように各大臣に人事権を戻したところで、官僚が媚びを売る相手は、大臣よりも実際に力がある有力国会議員などに変わるだけですよ。むしろ政権中枢が人事権を持っているほうがまだマシです。問題の本質はいかに筋を通せる官僚を増やせるか、増やせる政治土壌を作れるかです。

 

 さっき原敬の評伝を読んだと言ったでしょう。面白いと思ったのは陸奥宗光と原敬の関係。陸奥は外務大臣として外務官僚の原を重用するんだけど、原は何の忖度もなくガンガン言う。「いや、大臣の命令であればそれは従いますが、議論としては承服できません」って(笑)。これが現在だと「何言ってんだ。お前はクビだ」になっちゃう。この状態を正していかなければと思っています。