「人にうまく頼ることができない」、「人に傷つけられるのが怖い」、「他人と適切な距離が取れない」……人間関係に悩みはつきものですが、そんな悩みを解決するヒントが対人関係の「クセ」にあるとしたら?
1960年代に精神科医のジョン・ボウルビィが提唱してさまざまな人が発展させてきた「アタッチメント理論」では、私たちの親、パートナー、友人などとの対人関係を紐解くと、6種類に大別される「型」(アタッチメント・スタイル)があると考えられています。
「アタッチメント理論」の専門家で、立教大学現代心理学部の林もも子教授によれば、実に2人に1人のひとが、心から安心できる対人関係を自ら妨げてしまう「クセ」を持っているといいます。教鞭をとるかたわら、青山心理臨床教育センターでカウンセリングも行っている林教授に、「アタッチメント理論」の奥深い世界を紹介していただきました。(全2回の1回目/#2へ続く)
自分の「アタッチメント・スタイル」を考えてみよう
――そもそも、「アタッチメント理論」における「アタッチメント」とはなんでしょうか。
林 危機的な状況下にいるときや、危機を予測したとき、恐怖や不安といったネガティブな感情を感じますよね。危機というと大げさに聞こえますが、たとえば「もうすぐ試験だけど、心配だ」「仕事でミスしちゃったんだけど、どうしよう」といったシチュエーションを思い浮かべてもらうと、わかりやすいと思います。
人間には、そういったネガティブな感情を感じたときに、家族やパートナー、友人など、親しい仲の人に近づいて、安全や安心の感覚を取り戻そうとする傾向があります。この傾向を「アタッチメント」と呼びます。
このアタッチメントには「クセ」とでもいうべき型があることがわかっていて、この型を「アタッチメント・スタイル」と呼びます。その型は大きく分けて6種類あると言われています。
――不安や恐れを感じて、人にSOSを出すときに、どんな行動をとるのか。アタッチメント理論は、そんな人間の本能的な行動を分析したものなんですね。人に頼るのが苦手とか、恋人に執着してしまうとか、人間関係の悩みを、このアタッチメントで理解できるのですか。
林 そうですね。そういった悩みもアタッチメントで理解できると思います。
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自分や周囲の人は、どのアタッチメント・スタイルに当てはまるでしょうか。今回、特別に専門家が使っている質問紙を少し簡単にしたものを教えていただきました。
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