6つのアタッチメント・スタイルの特徴
――ひとつひとつ解説していただけますか?
Aとらわれ型(猿タイプ)
林 「とらわれ型」の中核的な特徴は、人の近くにいたい、人と離れることが怖いということです。「猿タイプ」とありますが、おサルさんが木にしがみつくように、人に甘えすぎてしまう人。不安や恐れを感じたときはしつこく甘えてしまう、あるいは「なんでわたしの気持ちをわかってくれないの!」と困らせてしまうことが多いです。子どもが、あるときは養育者にベタ可愛がりされ、あるときは突き放されるような経験をしていると、とりあえず養育者の近くにいよう、注意をひこうと考え、甘えが強くなっていく。たとえば、それが「とらわれ型」の成り立ちの一つと考えられています。
B怒り―拒否型(ライオンタイプ)
林 「怒り―拒否型」の人は、自信家で、「自分しかあてにならない」と考えており、他者への不信感があります。そもそも他人の助けは必要ないと思っており、助けを求めようとしません。「なんでわたしが困っているのに、助けないの!」と怒りの形でSOSが出てくることもあります。怒りで人間関係を壊してしまう人で、この型のイメージは「ライオン」で表現しています。
C引っこみ型(亀タイプ)
林 「引っ込み型」は「怒り―拒否型」に似ています。自分に自信があって、なんでも自分でやれてしまうので、よっぽどのことがない限り、人には頼りません。「怒り―拒否型」と違うのは、怒りがなく穏やかなこと。動物では、亀のイメージ。「引っ込み型」の子どもは「自分で自分のことをやる、手のかからない良い子」と評価されることも多いです。日本人はこの「引っ込み型」が比較的多いとも言われています。
「怒り―拒否型」や「引っ込み型」の人は養育者にあまり甘やかしてもらえなかったり、あるいは養育者自身が「怒り―拒否型」「引っ込み型」で、他人との心理的な距離が遠い人に育てられた人が多いです。「怒り―拒否型」「引っ込み型」の人は甘えたい欲求を抑えて自己完結することを覚え、ある程度成功してきた人たちとも言えますね。
D恐れ型(うさぎタイプ)
林 「恐れ型」の中核的な特徴は、他人に対して「傷つけられるのではないか」という不信感を持っていることです。怖がって、怯えているうさぎのようなイメージです。不信感、遠慮、「怖い」という気持ちゆえに、困ったときに助けを求められないことが多い。「恐れ型」は、人間関係で傷ついた経験がある人に多く、養育者の影響のほか、ひどいいじめに遭う、ひどい先生にあたってしまうなどの経験で「恐れ型」になる人もいます。カウンセリングをやっていて、一番よく会うのがこの型です。
E明らかな安心型(犬タイプ)
林 明らかな安心型は、人との間で安心できるような関係を築くことに対する妨げがあまりない人です。他人に対する不信感が低いので人を信頼できるし、助けを求めることもできる。「拒絶されるのではないか」という恐れもあまりなく、ほどほどの自信があって、人との親しくなりたい気持ちもほどほど。人口の約5割がこの「安心型」だと言われています。人間と一番ほど良い関係を作るのは犬かなと思い、犬タイプとしています。
F「無秩序型」
林 実は、質問紙には入っていませんが、そのときどきによって異なるアタッチメント・スタイルが出てくる「無秩序型」の人もいます。あるときはすごく甘えてくると思いきや、次に会ったときはツンとして怒っていたり。このスタイルは虐待を受けた経験のあるお子さんなどに多く、逆に虐待をしている親御さんもこのスタイルの方が多いです。「怒り―拒否型」や「引っ込み型」、「恐れ型」よりもさらに高いレベルの不信感を他人に対して持っているタイプでもあります。
「アタッチメント理論」では、人と安心できるような関係を築くことができるEを「安心型」、築くことに妨げを感じるA~DとFの「非安心型」に分けており、さきほども言った通り、人口の約5割の人が「安心型」に分類されると考えられています。逆に言えば、人口の約5割が「非安心型」に分類されるわけです。