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あなたの人間関係の「型」はどれ? 人間関係をこじらせてしまう5つの傾向

立教大学現代心理学部・林もも子教授インタビュー#1

アタッチメント・スタイルはどうやってできるのか

――たとえば、困ったことがあるとすぐにドラえもんに助けを求める「のび太」は、猿タイプと言えるかもしれないですね。私たちのアタッチメント・スタイルはどのようにしてできるのですか。

 人は過去の経験から、「他人はどう行動するのか」「自分はどう扱われるか」について予測モデルを組み立てています。こうした予測モデルの組み立ては、幼少期から始まります。

 

 アタッチメント理論の支柱となっている「ストレンジ・シチュエーション」という有名な実験では、1歳半くらいの子どもと母親に、子どもにとってはじめての部屋に入ってもらって、その後に子どもにとって見知らぬ人に部屋に入ってきてもらいます。その後、母親が部屋を出るとどんな反応をするか、そしてここからが一番肝心なのですが、母親が部屋に戻ってきたときにどのような反応をするかを見るのです。この実験では、母親が戻ってくると、母親に近づいて安心感を取り戻せる子どもと、近づいてもなかなか安心感を取り戻せない子ども、そもそも母親に近づこうとしない子どもなど、何パターンかのスタイルがあることがわかりました。

――すでに、子どもの反応に「アタッチメント・スタイル」があらわれていたのですね。

 そうですね。そして、子どもが見せるアタッチメント・スタイルは、子どもに対する母親の接し方と密接に関わっていることもわかりました。

 小さい子でイメージしてもらえるとわかりやすいのですが、転んだときに、励ましてもらったりするような経験を繰り返すと、他人は信頼できるものだと学ぶかもしれない。対して、転んで助けを求めても、「うるさい!」と怒られる経験を繰り返すと、他人は助けてくれないものだと学んで、SOSを出さなくなってしまうかもしれない。そうした経験を重ねるにつれ、子どもの中で他人がどう行動するか、自分がどう扱われるかの予測モデルができるのです。

 こうした私たちの中の人間関係の予測モデルを、アタッチメント理論では「内的作業モデル」と呼びます。「内的作業モデル」ができるにつれ、アタッチメント・スタイルができあがります。

アタッチメント・スタイルは、成人後も変化する

――アタッチメント・スタイルは一生変化しないものなのですか。

 アタッチメント理論が提唱された当初は、幼少期に形成されたものが生涯続くと考えられていました。また、アタッチメントの対象となる親しい仲の人を「アタッチメント対象」と呼ぶのですが、「アタッチメント対象」は母親に限定されると考えられていました。

 

 しかし、アタッチメント・スタイルの研究が進んだ今では、アタッチメント・スタイルはどのような人間関係を経験していくかによって、人生のどの時期でも、成人後も変化することがあることがわかっています。また、父親や他の家族はもちろん、先生や友人、パートナーなどもアタッチメント対象になることもわかっています。

――それでは、アタッチメント・スタイルはこれからでも変えられるのでしょうか?

 変えられますよ。それに、ある意味、カウンセラーの仕事は「非安心型」のアタッチメント・スタイルを持つ方に安心できる関係を提供し、「安心型」に近づいてもらう側面があるといえるのかもしれません。というのも、困ったときに安心して周りの人の助けを求めることができないということ自体が、さらなるストレスや悩みを生み出すからです。

 アタッチメント・スタイルを変えるとまでいかなくても、自分のスタイルを自覚することが人間関係改善のヒントになることは多いと思います。実際に、親子間や配偶者間、先生―生徒間や上司―部下間の関係など、さまざまな人間関係の悩みで相談に来られる方に、人間関係の「クセ」についてはよくお話しています。

「クセ」を自覚することで、人間関係の改善のヒントに

――たしかに、自分の人間関係の「クセ」がわかれば、人間関係の悩みに対して、解決の糸口が見つかりそうです。「非安心型」のアタッチメント・スタイルを持つ人が人間関係を改善するためには、どうすればいいのでしょう。

 今、「人間関係の問題点を改善したい」と考える人が多いですし、そういった書籍もたくさん出版されていますね。でも、人間関係のクセって自分1人の力で変えることは難しいと思うんです。なぜなら、実際に人間関係の中での体験がないと変わることは難しいからです。

 ですから、自ら「変わりたい」と願う人は「安心できる人間関係の中で、変わっていくこと」を目標にすること。反対に、子どもや生徒、友人やパートナーなど、周りの人間関係に悩む人を支えたい人は、「その人にとって安心できる関係を提供し、ちょっとでも安心型に近づいてもらうこと」を目指すといいでしょう。

#2へ続く)

 

写真=深野未季/文藝春秋

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