若者に人気の仏教の教えは?
――「仏の教えは生きている人たちのためのもの」とおっしゃっいましたが、若い人たちに人気の教えはありますか。
朝倉 たとえば、「固定概念を崩していこうよ」という話でしょうか。これは今っぽい言葉に聞こえますが、実は仏教の教えの一つでもあるんです。
「正見」という悟りを開くに至る上で大事な教えでは、「物事の一面にとらわれて他の面が見えなくなると、間違った認識をしてしまいますよ」ということを説いています。人に対してもそうですよね。たとえば、間違いを犯した人について「この人はこんな悪いことをした」と考えるのも間違いではないんだけれども、それがその人の全てではない。
見方を「変え」なくてもいいんです。「変える」と言うと、それもひとつの見方を否定することになるでしょう。もっと違う面もあるかな、こんな一面もあるかな、と見方を「増やす」ことが、人付き合いでも、お仕事でも大事なんだと思います。
「テクノ法要」の“人気曲”
―― 仏教には現代人のわたしたちの生活に直結するような考え方がたくさんあるんですね。ほかには、「テクノ法要」で人気の“曲”はあるのでしょうか。
朝倉 「正信偈(しょうしんげ)」というおつとめですかね。これは浄土真宗では日常的におつとめするもので、お寺に頻繁に来る方々は一緒に“歌える”んですよね。
――そうなんですか。
朝倉 僕はテクノ法要の“曲”を作るときは、元のメロディーやリズムを尊重して、あまり変えないようにしているんですよ。バックトラックをつけている感覚でやっている。だから、お年寄りの方が来られると、一緒におつとめしてくれるんですよ。声を出してくれる。
そうすると、若い人から「えっ、最新のものを聴きに来たはずなのに、お年寄りの人たち、これ知ってるの?」「あっ、おじいちゃんやおばあちゃんが昔おつとめしているのを聴いたことがあるなあ」といった声をいただきますよ。もともとみなさんに馴染みがあるんですよね。
――いわば“定番曲”なのですね。
朝倉 そうですね。もともとは本の中に書いてある文章で、読み上げるものではなかったのですが、 550年くらい前に蓮如上人という方が「みんなで唱和するのがいいのではないか」という考えを持たれて、実際にメロディーをつけてみたんですよ。
ちなみに、そのときにつけたメロディーも、「今様」という、当時流行していた流行歌なんです。ですから、ポップスの要素がふんだんに入っている。
――では、この「正信偈」も当時の最先端だった。
朝倉 メロディーをつけた目的は、やっぱり「みなさんに親しんでほしい」というところだったようです。思いは一緒ですね。