人気のゆるキャラを理解するキーワードは“透け感”
先日開催された「ゆるキャラグランプリ2018」出場者たちのプロフィールや動画を見てて分かるのは、ゆるキャラの基本形は“中の人”の存在を積極的に開示しない、ガチャピンやくまモンのようなスタイルであるということだ。
しかしゆるキャラも数が増えすぎて、見た目や設定が可愛いだけではなかなか全国的な認知を得るのは難しいのが現状。
そこで“中の人”をむしろ積極的に仄めかし“透け”させるアプローチのゆるキャラが、存在感を発揮するようになった。たとえば、数年前のグランプリにも出た、お笑い芸人・チョコレートプラネットが手がけるわらび舞妓ちゃん。写真を見てもわかるように“透け”ているどころの騒ぎではないインパクトだ。
みんなゆるキャラグランプリの投票おおきに!
— わらび舞妓ちゃん【公式】 (@kyotowmc) 2015年11月23日
ホンマ感謝やで!
来年は企業・自治体・ハッカーの協力がないと上位は狙われへんな〜https://t.co/aPdcr5bgeZ pic.twitter.com/RcYfL1cPBZ
そうした潮流の代表格が、他ならぬふなっしーである。
ふなっしーは、話術や高い身体能力、背中にある「イリュージョン」(≒ファスナー)から飲食物を取り込み、食レポをする芸などによって、“中の人”の“透けている感じ”いわば“透け感”を臨界点にまで到達させる。それをやり続けたことで、着ぐるみの人形とあの“中の人”が一体となった「ふなっしー」としか呼びようのないキャラクターが作られていった。
2人の“ポストふなっしー”たち
このふなっしーの位置づけをより明確にするために、先日、わたしが早稲田祭内の企画でトークイベントに招いたプロレスラーのスーパー・ササダンゴ・マシン氏と、ドールスーツ・アーティストの橋本ルル氏にも触れておきたい。
スーパー・ササダンゴ・マシンはレスラーマスクにコスチューム、橋本ルルはドールヘッドに球体関節ストッキングとドレスを着用している。いわば動く人形である彼らに共通するのもまた、“中の人”の存在が意図的に“透け”させられているという性質だ。
前者はレスラー活動に加えバラエティ番組への出演も多く、グルメコーナーでは積極的にマスクを脱ぎ、“中の人”=マッスル坂井が顔を出して味の感想などを言う。プロレスの世界では、マスクマンが自らマスクを脱ぐことはご法度のはずだがどこ吹く風。周囲ももう慣れてしまったのかわざわざツッコむ人はいない。
コンとコトン「麻生祐未、サラリーマンNEO“社宅の妻たち”裏話を語る!」 - NHK 麻生祐未が今週も登場!コムアイとササダンゴが「サラリーマンNEO」「七人のコント侍」のコントを堪能!「社内スタントマン」「テレビサラリーマン体操」「川上くん」 https://t.co/FMfJFRP1Ct
— スーパー・ササダンゴ・マシン (@abulasumasi) 2018年9月20日
後者はモデルやダンサーなど、その時々の用途に応じて“中の人”を変えていることが公言されている。体型はもちろん、仕草やそこからにじみ出る“性格”は規律化されておらず、日によってそれぞれの橋本ルルが体現されていればよいという。ただし彼女の場合、喋ることや、仮面、衣装を外すことはなく、誰が入っているかは内緒だ。
ここからわかるのは、共通点はありながら、それぞれの“中の人”の“透け感”が異なっており、彼らの目指すキャラクター性によってそのパラメータが調整されているということ。実はこうしたアプローチは前述したふなっしーを含むゆるキャラや、(今回は紙幅の関係で詳しく言及できないが)バーチャルYoutuber界隈でも採用されているものだ。
だとすると、スーパー・ササダンゴ・マシンや橋本ルルは、志向するスタイルも“透け感”具合もだいぶ異なりつつ、それぞれの方法でポストふなっしー的表現を模索する者たちであったともいえる。見ていてつらくなることのほうが増えたゆるキャラ業界でも、魅力的なキャラクターを生むために最適なパラメータを探る作業がもっとなされてほしいなと、素人考えでつい願ってしまう。