先日、『2001年宇宙の旅』のIMAX版を、劇場の大スクリーンで“体験”してきた。

 私にとっての完璧なる創作物のひとつであり、SF映画の金字塔でもあるこの作品を初めて観たのは、中学生の頃、大阪梅田のOS劇場でのリバイバル上映だった。シネラマのスクリーンに映し出されるそれに対峙することは、鑑賞ではなく“体験”だった。それ以来、劇場で上映されるたびに出来る限り足を運ぶようにしている。ビデオ、LD、DVD、BDとパッケージも持っているが、それらを開封することはない。なぜなら、劇場のスクリーンでなければ『2001年宇宙の旅』という“体験”を再生(リバイバル)することはできないからだ。

ただの映画鑑賞でも消費でもなく

 今回のIMAX版の上映でも、若い世代から高齢のベテラン映画ファンまで、多くの人と同じ空間で「2001年」の宇宙体験を分かちあうことができた(残念ながら70mm版はチケットが取れずに断念したが)。

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 ただの映画鑑賞でも消費でもなく、世代や時代を超えた体験の共有を、映画館のスクリーンが生み出してくれた。

 そして、そんな体験をリバイバルさせてくれる映画が、40年の時間を隔ててリバイバル上映される。

 それが、ウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬 オリジナル完全版』である。

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 私が初めて観た“恐怖の報酬”は、1978年に日本公開された“短縮版”だった(全米公開は1977年)。

 映画を観る前に詳細な解説と紹介を聞いていたため、先入観をもって観てしまった感がある。関西方面在住の方ならおなじみの浜村淳氏のラジオ番組だった。その番組で述べられていたのは、『恐怖の報酬』にはアンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による1953年制作のオリジナル版が存在し、フリードキン版はそれを越えていない、ということだった。しかし、当時はオリジナル版を観るすべもなく、両作の比較などできなかった。そんな事前情報をもって観たフリードキン版だったが、普通に面白く、堪能できた。