いつか必ずやってくる親との別れ。「母の死」を真正面から漫画で描いた瀧波ユカリさんは、仕事と育児を両立しながらの遠距離看護について「日常が大変で、逆に悩んでいる場合じゃなかったというのが救いにもなった」と語ります。ストレスや悲しみとどう向き合い、乗り越えたのでしょう。看護を通じて見えたことや、お母さまとの思い出についてもお聞きしました。

瀧波ユカリさん

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仕事と育児と看護をうまく回すためのコツ

──仕事と子育てと遠距離看護と、本当にやることがたくさんありましたよね。バランスはどうやって調整していたのですか。

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瀧波 私の場合は、日常が大変で、逆に悩んでいる場合じゃなかったというのが救いにもなったように思います。少しでも悩んでいると仕事も育児も立ちゆかなくなるので、頭に悩めるスペースがなくて、かえっていろいろ進められた気がします。

 だからもし、自分の子どもが自立した後で、仕事もそんなに忙しくなかったら、たぶんもっと悩んでいたと思います。仕事と育児と看護をうまく回すためには、あまり悩まないようにするのも大事だと思います。

 

──家族旅行として、みなさんでハワイに行かれましたが、それも「悩むなら行こう」という感じで決めたのでしょうか。

瀧波 私は昔から悩まないでまず行動するタイプなんです。生まれつきの性格もあると思うんですけれど、物事って行動さえすれば先に進むので、何でもいいから思いついたことから行動してみるようにしています。

 がん患者をハワイに連れて行くのはリスクもありましたが、そこは「ダメになったらしょうがない」と割り切るしかないと思うんですよね。

──お母さまの治療費はもちろん、ハワイ旅行や、大阪と札幌の往復など、看護にもかなりのお金がかかったのでは。

瀧波 私は普段お金をむだに使うと落ち込むタイプなんですけど、お金って全部が有効に使えるわけじゃないんですよね。最後の思い出作りに、と家族全員で行ったハワイ旅行は有効なお金の遣い方だったと思います。我が家ぶんだけでもすごい金額でしたけど(笑)。