1ページ目から読む
2/2ページ目
たとえうまくいかなくても……
僕は野球が好きです。
もっともっと上手くなりたい。ずっとその思いだけで、小学生の時から今日まできました。しかし、いつしか野球を心から楽しむ気持ちを失いかけていたのかもしれません。
ドミニカ共和国には、そういう僕の野球の原点があったのです。
もっとうまくなるための、もっと成長するための、そしてもっと野球が好きになるためのエネルギーを、カリブ海のこの小さな島国で見つけた気持ちになりました。
彼らのように失敗を恐れずチャレンジして、たとえうまく行かなくてもそのチャレンジを楽しむことが、野球で成長するには絶対に必要です。
そのことを、周囲の大人たちが理解しなければならないのだと思います。
「パラ・ラ・カイエ(Para la calle)!」
ドミニカの粗末な球場では、子供たちの誰かがホームランを打つと、みんながこう叫びます。
「通りまで飛んでった!」
グラウンドの仕切りは、オンボロのフェンスが立っているだけ。でも、そのフェンスを越えて道路までぶっ飛ばすホームランを打とうと、子供たちはいつもフルスイングをしています。三振をしても誰も咎めることはありません。見事にホームランを打ったら、みんなで叫んで大はしゃぎします。
「パラ・ラ・カイエ!」
野球とは、決して苦しいものではない。
日本の子供達が、野球を楽しいものだと心から思えるようにするには、どうすれば良いか。そのことを伝えるために、僕はこの本を書くことにしました。