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DeNA筒香嘉智の告白「子どもたちに勝利至上主義を植えつけてはいけない」

ベイスターズ主将の思い

2019/01/17

 1月14日、大阪・堺市内で自身が育った少年野球チーム「堺ビッグボーイズ」の野球体験会に参加した筒香嘉智。イベント後には少年野球界への持論を述べた。以前から筒香は、日本ならではの野球指導、なかでも「勝利至上主義」に疑問を持っている。彼が日本球界に伝えたいこととは――。自身初めての著書『空に向かってかっ飛ばせ!未来のアスリートたちへ』から一部を紹介する。

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「勝利至上主義」3つの弊害

 日本の野球指導の何が問題なのでしょうか。

 僕が小学生のとき和歌山ニューメッツで野球を始めると、監督さんからは「勝たなアカン」と言われ続けてきました。横浜高校で求められたことも、勝って甲子園大会に行き、日本一を目指すことでした。

 選手として求められるのは、いつも勝つためのプレーです。そこには勝利以外の価値観はほとんどなかったといっても言い過ぎではないかもしれません。

©文藝春秋

 もちろん僕も「勝つこと」「勝ちを目指すこと」がダメだと言っているわけではありません。スポーツである以上、勝つのが目的ですし、プロなら当たり前のことです。

 しかし、成長過程の子供たちに、「勝つこと」はそれほど重要でしょうか。いや、むしろ弊害になる場合さえある、と僕は思います。勝つことが絶対的な目標とされる「勝利至上主義」は、いま様々なスポーツの現場で問題視されています。

 勝利至上主義の弊害の一つは、野球が子供たちのためではなく、指導者の実績や功績、関係者や親など大人たちの満足のためのものになってしまいがちな点です。

 少年野球や高校野球、大学野球を含めた子供たちの野球は、3年から4年のスパンで選手がどんどん入れ替わります。そのためチームの実績は実際にプレーをした選手たちではなく、チームと指導者の功績として評価されることになるわけです。

和歌山ニューメッツ時代の筒香。マウンドに立つことも

 そうして実績を残した監督は周囲から高い評価を受け、発言力も強くなります。その評判を聞いて選手も集まるようになっていき、チームは活況を呈するようになる。それは一つの現実です。

 すると中には、チームの評判や自分の名声を守るために、とにかく勝つこと、勝って実績を残すことばかりに躍起になってしまう指導者が出てきても不思議ではありません。

 そうした現場で起こりがちなことが、選手に対する必要以上の圧力、考えられないような暴力やパワハラまがいの指導なのです。

 さすがに今は選手に直接、手をあげる指導者は少なくなっていると聞きます。