監督や親が子供たちを追い込む

 しかし最近でも、全国優勝を何度も経験している大阪のある少年野球チームの監督が、「ベースタッチが甘い」と選手を平手打ちする動画が「YouTube」にアップされ、問題になりました。

 もちろん周囲の目がある試合中での暴力はほとんどなくなってきているようですが、それでも監視の目のない練習中などに、監督やコーチが選手に手を上げる事件が根絶されたわけではないそうです。

©文藝春秋

 実際に手を上げることはないとしても、「勝つためには暴力は必要」と心の底で考えている指導者はまだまだ多い。そういう指導者が手を出す代わりに選手に対して行うのが、威圧的な言葉の暴力やいじめだと聞きました。

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 僕が少年野球や高校野球を見ていて嫌だなと思うのは、試合や練習で監督や指導者が、ミスをした選手を罵倒する姿です。

「へたくそ!」

「ばかやろう!」

「使えないんだよ!」

「帰れ!」

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 選手が失敗すると、ベンチで踏ん反り返った監督やコーチが、こんな風に罵声を浴びせる現場を何度も目撃したことがあります。

 本来は一番の味方になってあげるべき選手の親までもが、選手を追い込むこともあります。

「一生懸命にやっているのか?」

「頑張らないとダメだ!」

 こうやって自分の子供を叱り、辛く当たるようになってしまうケースすら生まれてしまうと聞きます。

 標的になった選手は孤立無援で、事あるごとに監督から怒鳴られ、罵声を浴びせられて、結果としてベンチから外されてしまう。最後は他の選手の保護者までもが無視したりする。そういういじめの構図に発展して、チームから追い出される。そんな出来事も少なくないと聞いています。

空に向かってかっ飛ばせ! 未来のアスリートたちへ

筒香 嘉智(著)

文藝春秋
2018年11月30日 発売

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