1部はミュージカルで2部はライブという構成
もちろん、ミュージカル『刀剣乱舞』でも、日本の国宝「三日月宗近」(9月の巨人-ヤクルト戦の始球式には紫の衣装で登場しましたね)や沖田総司の愛刀「加州清光」、源義経の短刀「今剣」といった「刀剣男士」を演じるのは水もしたたる若手イケメン俳優たち。1部はミュージカルで2部はライブという1粒で2度おいしい構成です。
黒髪系JKからコスプレ女子、清楚なOLさん、絶滅寸前のギャルまでジャンルを問わない女子たちの熱視線が飛び交うライブパートでは、さっきまで物語の世界を生きていた「刀剣男士」たちがポップなナンバーを歌い踊り、汗を飛ばして時に衣装も脱いでくれる。ライブ中はペンライトも振れますし、細かい規定があるとはいえ、応援うちわの持ち込みも可能。派手な映像や特殊効果だってバンバン使いますよ。
どうだ、これでもう「演劇なんて暗くてダサい」とは言わせない。高い、と思われがちな舞台のチケット代もそれこそTDLの1DAYパスポートとさほど変わりありませんし、カーテンコールでのコメントを俳優本人ではなく演じるキャラクターのまま発する姿も浦安の夢の国と重なります。
「刀剣男士」たちが背負っている“業”
ただ、この夢の国には避けて通れないものがあるのです。それは“卒業”。前述のテニミュが15年も上演され続けているのは、一定期間でキャストを入れ替え作品の新陳代謝をはかっているから。キャラクターは舞台に残って中の俳優は去る……これが一見「ウェーイ!」な世界にも見える2.5次元舞台の厳しいリアルです。
「原作のキャラクターに忠実に演じること」から卒業した俳優は、それまでとはまったく違う考え方と方法論で役や作品、共演者と向き合わなければなりません。自分にしかできない……オリジナルとして役の構築ができなければ、この業界……舞台の世界での未来はないからです。
ある意味、刹那。熱量を武器に殺陣に歌にダンスに芝居にと20代を駆け抜け、女子の声援を一身に受けてトップを獲った瞬間にゼロからのスタートが待っている。渋谷のNHKでまばゆい光を浴びた会見後にYOSHIKI先輩と笑顔でインスタに写っていた「刀剣男士」たちも、じつはそんな“業”を背負い舞台に立っているのです。
平成最後の紅白歌合戦。ミュージカル『刀剣乱舞』の「刀剣男士」たちは、きっときらびやかで華やか、カッコ良いパフォーマンスを私たちに魅せてくれることでしょう。だけど、少しだけ知ってほしい。そのキラキラしたステージが終われば、彼らはまたみずからが背負う刹那に向かって全力で走っていくということを。