「たしかに・しかし」を使う3つのメリット
この「4部構成」さえマスターすれば、力は格段にアップします。
まず、(1)「イエス・ノーを示す」、(4)「結論を書く」はほとんどの方が理解できるでしょうから、(2)の「たしかに・しかし」から説明します。
(2)には3つのメリットがあります。第一に、反対意見を書くことで、答案が客観的なものになる、つまりあなたが客観的なものの考え方ができる人物であると採点者にアピールすることができます。これは、とりわけ医療系の学部などで出題されることが多い、倫理・道徳などが絡んだ微妙な問題のときに有効です。最近は少なくなりましたが、「がん告知」などがそうです。最近なら「代理母」がそうでしょうか。「代理母はよくない」と書くのはいいのですが、一方的に断罪するような印象を与える文章になると、採点者も、「こういう人物は医者や看護師に向いているのか?」と考えるかもしれません。「それを必要とする人がいるのはわかる」と、反対の意見も十分に考慮したうえで判断していることを示したほうが、印象もよいし、何より議論が深まります。
次に、「たしかに・しかし」を入れることで、対立軸が明確になります。イエスかノーかに落とし込むということは、物事を2項対立でとらえているということです。それを明らかにすることで、必然的に論理構造が鮮明になります。
最後のメリットは、「字数稼ぎ」ができることです。小論文記述のアンコは、(3)「イエス・ノーの根拠を示す」ですが、それだけでは必要な字数に達しないことが多い。そこで、足りない分を、「たしかに」の後の部分で稼ぐのです。ここで気をつけてほしいのは、膨らませるのは「たしかに」の後の部分だけで、「しかし」の後は短くていい。「しかし」の後を長くしようとすると、(3)の根拠とかぶってしまいがちです。根拠は全部(3)に回すつもりで、「しかし」の後は簡単にすませてください。
頭のよさを見せるゲーム
すでに述べたように、(3)「イエス・ノーの根拠を示す」が小論文のアンコの部分になります。ここであなたのとっておきのネタを披露します。
ここで重要なのは、先ほどの例の「憲法改正」のように、必ずしも出題されたテーマと根拠がストレートにつながるものではなくてもよいということです。たとえば、あなたが防衛問題について、書けるだけのネタがないとします。しかし、高齢化や少子化問題なら十分に学習してきた。ならば、無理はあるにせよ、それらをつなげて論じることもできるのです。
もし、それがうまくいったなら、論文に独創性が出ることになります。それでは、憲法改正と少子化をつなげてみましょう。
〈日本は今、深刻な少子高齢化に直面している。2050年に人口は8000万人台まで減り、そのうち4割の3000万人以上が高齢者になるという推計もある。そんな中で防衛力の強化といっても、自衛隊の現場を担う若者が少なくなってしまえば、必要な部隊を編成することもむずかしくなるだろう。機械化やコンピュータ化が進んでも、それらを動かす人間がいなければ、潜水艦もイージス艦も鉄の塊にすぎない。結局、防衛力よりも各国との協調が安全保障の要となる。争いごとを話し合いで解決する姿勢を貫き、世界の信頼を得ることで、日本の安全を保障する。憲法改正によって世界、とりわけアジア諸国の信頼を失うことのほうが、日本にとってより危険である〉
これはこれで小論文として成立しています。