震度3の揺れで「大問題」になった咲洲庁舎
この3つの島には大阪が行政主導で行ってきた開発計画の苦い記憶が凝縮されている。咲洲にあるWTCは1995年3月に竣工した超高層ビルで、大阪市港湾局が中心となって第三セクター方式で建設された。当時は横浜のランドマークタワーに次ぐ256mの高さを誇るオフィスビルだった。しかし明らかにオフィス立地とは異なる場所でのこの計画は当初よりテナント誘致に苦戦。2003年にはWTCが236億円もの債務超過を抱えて大阪地方裁判所に金融機関との調停を求める事態に発展した。
その後このビルは大阪府の咲洲庁舎として使用されてきたが、2011年の東日本大震災でも震度3の揺れに対して長時間のエレベーター閉じ込め事故や天井落下、床の亀裂などが多数生じて大問題になった。現在は建物の一部をホテルへ用途変更する計画が発表されているが、いわく因縁のついた開発として多方面からの批判にさらされた苦い経験を持つ。
また舞洲は大阪市が2001年から2008年の夏季五輪の開催地として計画、招致活動を続け、夢洲には選手村などの施設を整備する予定だったが、開催が叶わず、これらの人工島は大阪市にとってどうにも結論が出ない問題山積の島々になっていく。
政府の進めるIR構想の「最有力地」?
次に大阪市が飛びついたのが現在政府の進めるIR(統合型リゾート)構想である。2016年12月に可決成立したIR推進法案(正式名称「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」)に則り、大阪市はこの舞洲を候補地として国に働きかけを始めたところだったのだ。現に3カ所とも言われるIR候補地で、大阪は最有力地とも噂されている。
そんな中での今回の万博誘致の成功。大阪市はようやく夢洲をIRと万博という2つの「おもちゃ」を駆使して大規模開発に名乗りを上げることができそうである。咲洲ではオフィス運営で失敗、舞洲では五輪誘致で失敗、夢洲での万博誘致の失敗は絶対に許されないこと。関係者の喜びもひとしおであろう。