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医師国家試験に「漢方」は出題されない

 2001年に医学・薬学教育のコアカリキュラムに「和漢薬を概説できる」と記述され、2017年には改正コアカリキュラムで「漢方医学の特徴や、主な和漢薬(漢方薬)の適応、薬理作用を概説できる」と増補されました。その間、2008年には各医療機関は「漢方」という言葉を使って、そこでの医療内容を標榜することができるようになりました。こうして見ると、漢方の評価は高まってきているようにも思えます。

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 しかし、実際のところは、医学教育の中に漢方医学が取り入れられたとはいっても、厚生労働省が任命する医師国家試験委員に漢方専門の方は任命されませんし、任命されない以上漢方の問題は国家試験に出題されません。そして、漢方の問題が国家試験に出題されない以上医学生はほとんど漢方を勉強しません。よって、薬剤師国家試験に漢方の問題が出題され、それに合格するために漢方を勉強した薬剤師に到底及ばない漢方の知識しかない医師ばかりが誕生するということになるのです。そのような医師が漢方薬を処方するのですから、危険なことこの上ありません。

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世界は「東西医学融合」へ

 今年、世界保健機構(WHO)は、国際疾病分類を約30年ぶりに改訂し、第11回改訂版(ICD-11)を公表しました。この中に伝統医学の項目が加えられたことにより、世界の医療は西洋医学一辺倒から東西医学融合へと大きく舵を切ることになりました。伝統医学が国際的に認められたことにより、漢方の地位は国際的に向上するでしょうし、現在まだわかっていない漢方薬の作用機序も世界的規模で検討されていくことでしょう。漢方の偉力が今後、ますます期待されることになりそうです。