2019年も、世界中がトランプ政権に振り回される年となるでしょう。トランプ氏個人のハチャメチャな言動の表層を超えたトランプ現象の本質は、米国内政治の分断を一段と深め、かつ、米国主導の戦後秩序を少しずつ解体させていくことにあり、その傾向は継続するという見方です。
本稿執筆時点では、米国中間選挙の結果は出ていません。大方の予想は、野党民主党の躍進(≒青い波)が起き、少なくとも下院では与野党が逆転するというものです。とは言うものの、2016年の大統領選挙以来、米国で選挙結果を予想することは非常に難しくなってきています。全ては投票率次第というのが実態のようで、民主・共和両党ともに自陣営の引き締めに躍起になっています。結果として、国内政治はますます分断され、外交政策も国内政治を強く意識した展開となっているのです。本稿では中間選挙の結果にかかわらず、起こってくるであろう構造を中心に2019年を展望したいと思います。
特別検察官の捜査を軸に展開する内政
2019年の米国の内政を予想する上で核となるのは、やはりムラー特別検察官が指揮する捜査の行方ということになろうかと思います。2016年の大統領選挙において、ロシアによる選挙介入との共謀があったのか、また、その捜査に対する司法妨害があったのか。特別検察官の捜査は、トランプ政権の中枢部へと及びつつあります。ある時期にはトランプ選対のトップを務めたマナフォート氏の有罪が確定し、捜査協力が実現していますから、トランプ大統領本人やその家族に捜査が及ぶ可能性はかなりあるのではないでしょうか。
しかし特別検察官の捜査結果の影響は、中間選挙の結果に左右されます。民主党が下院を制するような場合には、大統領の弾劾手続きが開始される可能性が高いからです。その場合は、国内政治の動きはすべて政局含みの展開になります。いわゆる「ねじれ」状態に陥った議会は全く機能せず、重要政策も殆ど動かない展開となるのではないでしょうか。それでも、弾劾手続きについて早期に結果が出るわけではないでしょうから、弾劾手続きを抱えたまま、2019年後半には本格化する大統領選挙シーズンを迎えることになります。分断が分断を呼ぶ、危険な政治ショーが延々と続くという展開です。
共和党が議会を引き続き掌握し続けるような場合、あるいは、特別検察官が捜査を通じて大統領を事実上免責するような場合には、弾劾という憲政上の手続きへと進むことはないはずです。かといって、内政上の課題がどんどん進んでいくかと言えば、それもないでしょう。共和党が一致して推すことができた意味ある改革、例えば減税、規制改革、軍備強化などは既にやり切った感があります。今後、さらに難しいテーマに取り組む政治的な余裕が果たしてあるか。頓挫した医療保険改革をもう一度持ち出してくるのか。移民政策や、麻薬対策、司法改革等に挑戦するのか。なかなか難しいというのが現実ではなかろうかと思います。