昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/01/21

 米中の「貿易戦争」が重要であるのは、21世紀の世界において大きな影響力を揮う米中両国の関係性を規定する問題だからです。報復関税の応酬は、既に中国から米国への輸入品の半分の規模にまで拡大しており、IMFによれば米中双方の経済成長を最大約0.9%押し下げる効果があると言います。ただ、足元の米国経済は減税や規制緩和を好感して株式市場が最高値圏にあり、中国経済も関税導入前の駆け込み需要で潤っている状況で、事態の深刻さは表面化していません。

 今後、事態はどのように推移していくのか。現状について、相手の横っ面を思いっきり殴ってから交渉を始めるトランプ流の交渉術に過ぎず、習近平氏とのトップ会談によって事態は打開されるというのが最も楽観的な見方でしょう。中国国内の知的財産の保護や、国有企業や輸出企業への優遇策、人民元の誘導等を改めさせることでトランプ氏が勝利宣言し、矛を収めるというシナリオです。というのも、貿易戦争に対しては、短期的には確かに米国の方が有利だからです。中国からより多くを輸入しているわけで、関税を通じて相手に与えられる損害額が大きいからです。

©iStock.com

 長期的な影響はおそらく異なります。中国共産党の中で核心としての地位を得た習近平氏にとっても、外圧に屈したという形式はリスクを伴います。仮に、妥協点を見出すことができたとしても、以後はなりふり構わず米国経済に依存しない体制づくりに邁進するはずです。究極的には、一帯一路構想をさらに強化したようなユーラシア大陸市場の囲い込み的なものでしょう。トランプ政権は貿易赤字削減という短期的な勝利を得ることで、米国市場を中心に回っていた戦後経済秩序の終焉をかえって早めることになるのではないでしょうか。

核保有国としての北朝鮮が残存

 注目すべき第2の分野は北朝鮮情勢でしょう。早期の第2回米朝首脳会談の開催が予想されていますが、トランプ政権の交渉姿勢はもはや明確です。「朝鮮半島の非核化」という在韓米軍の縮小・撤退につながる北朝鮮主導の土俵に乗っかり、非核化に向けた具体的なスケジュールや手順は実にあいまいです。その中で、朝鮮戦争の終戦宣言、平和条約締結、経済援助という緊張緩和策だけはどんどん進んでいくでしょう。中韓がそれを望む中、米国はもはや原理原則に立ったタフな交渉を行う気がないように見受けられます。

 結果的にどういう展開となるかと言えば、米国への敵意は目立たなくなったものの、核保有国としての北朝鮮が残存するということです。核不拡散体制を維持するという大義名分がありますから、明確な形で北朝鮮の核を容認することはないでしょうが、朝鮮半島の非核化は延々と続くプロセスとなってしまうでしょう。仮に、いくつかの核弾頭が撤去されたとしても検証もあいまいで、いつでも再開可能な状況が続くでしょう。

 ミサイル技術も当然残ります。その過程で、在韓米軍のあり方も変わります。一応の緊張緩和が行われた後、経済開発の段階で主導権を握るのは中国でしょう。韓国で進歩派の政権が続くとすれば、韓国もその流れを推進する側に回るはずです。米国にとっての脅威がある程度取り除かれた以上、あとは勝手にやってくれという感じでしょうか。日本からすれば、核兵器が残存する中国の影響下に入った朝鮮半島と向き合うという展開です。