12月9日、皇太子妃雅子さまは55歳の誕生日を迎えられた。2003年12月に長期療養へ入られてから16年目の今、雅子さまが公の場にお出ましになるご様子を報道などで目にする機会は、あまり珍しいことではなくなったように思う。「七大行啓」と呼ばれる地方行事のうち、雅子さまはこの1年の間に、「全国『みどりの愛護』のつどい」(5月/滋賀県)、「国民文化祭」(10月/大分県)、「全国育樹祭」(11月/東京都)へ皇太子さまと共に臨まれている。
「第29回全国『みどりの愛護』のつどい」へご臨席のため、滋賀県を訪問された皇太子ご夫妻のご様子を、私は現地で取材することになった。5月25日、米原駅に到着された雅子さまは白いパンツスーツ姿で、雲一つない晴天にお召し物がよく映えていた。「ここぞ」という時、雅子さまは白いお召し物を選ばれる。白は、勝負カラーの一つだと思う。
米原市地域包括医療福祉センター「ふくしあ」では、リハビリに取り組む子供たちの様子などをご覧になり、親子や職員と交流された雅子さま。子供たちに「何月生まれですか?」とお尋ねになる中で、ある人が「この子はハッピーバースデーの歌が大好きなんです」と伝えると、雅子さまが「ハッピーバースデートゥユー」と歌われ、子供たちは大喜びだった。
ひこにゃんに「お元気ですか」
翌26日、式典が終わった後、皇太子ご夫妻は彦根城博物館を見学され、彦根市のゆるキャラ「ひこにゃん」の見送りを受けられた。お二人がひこにゃんにお辞儀をされると、ひこにゃんもお行儀よくお辞儀。皇太子さまがひこにゃんに「暑くないんですか?」と尋ねられ、周囲にいた人が「ひこにゃんはしゃべれないんです」と答えて、笑いを誘った。雅子さまが「お元気ですか」と尋ねられると、ひこにゃんは鈴を鳴らして応えていたようだ。こういった和気あいあいとしたやり取りが、近頃はずいぶん多くなってきたように思う。
皇太子ご夫妻がお乗りになっている車両が通過する奉迎ポイントや、ご訪問先でのお見送りなどに、次々と一般の人が集まって、大阪や三重からわざわざやってきたという人の声も聞いた。集まった人たちの間には、「雅子さまのお出ましが珍しいから」というよりは「次の天皇皇后両陛下になられる方々だから」「皇太子同妃両殿下の時代では最後だから」という意識があるようで、現場は独特の熱気に包まれていた。地元高校の新聞部の生徒が、ペンとカメラを持って「次の天皇皇后両陛下がお越しになっているから、何としても取材したいと思いました」と話していたことも印象に残っている。これだけ一般の人々から期待を込められていることは、皇太子ご夫妻にも伝わっていたのではないだろうか。