年明けから何かと話題の絶えない千葉ロッテマリーンズ。ルーキーの藤原恭大外野手が大阪桐蔭高校グラウンドでマスコミに公開して行った自主トレで場外弾を放ち、父母会会長の車にボールを当てて「エへへ、スイマセン」から始まり、みんなの寿司ボーイことブランドン・レアード内野手の獲得。そしてトドメはレジェンド・福浦和也内野手の引退表明である。その中で異質ながら注目を集めたのが2月の石垣島キャンプを日本テレビがCS生中継することが決まったというニュースだった。
どうした、日テレ?
初日の2月1日は10:00~14:00の4時間。二日目以降は11:00~14:00の3時間、生放送ぶっ通し。「朝からずっと雨だったら、どうするのかしら」というこの時期、島が雨期に入るという情報にも精通しているマリーンズフリークおばちゃんの余計なお世話はどこ吹く風とばかりにスポーツ各紙、さらに夕刊フジと県民紙の千葉日報で大きく報じられた。
確かに凄い事だ。石垣島から遠い彼方、北海道まで全国のお茶の間にCS契約さえすれば、生で選手の調整具合がリアルタイムで見れるのだ。これまでニコニコ動画でのネット生放送は見れたことは、見れたが、テレビ局製作はロッテでは初めて。しかも、あの5年連続年間視聴率三冠王の日本テレビである。ある意味、大ニュースだ。
メディア最大手が放つロッテ生中継はやはり規模が違う。ニコニコ動画がスタッフ若干名だったのに対して、今回はスタッフ25名にレポーター2名、さらにタレントゲストを送り込むことも考えているという。中継車は沖縄本島から船で運び込み。テレビカメラは5台と、ニュース報道用に1台の計6台が常駐。昨年12月から球場に先発隊を送りこんでリハーサルまで済ましているというから、「どうした、日テレ?」と叫びたくなるほどの力の入れようである。これまで日テレ=ジャイアンツの図式に新風が吹き込まれたのだ。大げさな表現だが、革命。平成最後のレボリューションといえる。
プロ野球にどのような革新が起こるのだろうか
この事は各種メディア業者でも話題で持ち切りとなった(残念ながら霞が関周辺では話題になっていない)。ある放送関係者は「予算だけでも1000万円は軽く超える規模。ウチには到底、出来ない」と声を震わせた。
布石はあった。CS有料チャンネル「日テレNEWS24」で昨年から公式戦全試合を放送。今シーズンも引き続き、オープン戦から全試合放送される。ネットメディア大手の記者は「ジャイアンツのコンテンツに加えて今、勢いのあるパ・リーグのコンテンツを手に入れることでプロ野球における日本テレビの体制を盤石にする狙いがあるのでは」と語る。
一方、夕刊フジの片岡将記者は「ドラフト1位で入団をした藤原恭大外野手は今後のプロ野球の中心となりうる逸材。その将来性を買っている。彼の入団が大きく関係している」と夕刊紙独特のうがった見方で評した。確かに1月8日の新人入寮の日は日本テレビの朝の人気情報番組「ZIP」が密着し、藤原選手の部屋まで侵入。その模様を翌朝、5分にもわたる長い尺で放送(ちなみに同日、入寮したジャイアンツの新人のニュースより長い)。もちろん藤原は番組内でZIPのポーズも披露した。狙いに関しては色々な考え方、見方があるが、それだけ千葉ロッテマリーンズが日本メディア最大手と手を結ぶまでの魅力的なチームに成長をしたという点では感慨深い。
そしてプロ野球屈指の攻めの姿勢でマシンガンのように情報を発信し続け、関西のスポーツ紙のようなプロ野球とは思えない軽いノリで話題作りを繰り返す千葉ロッテマリーンズと年間視聴率5冠王がタッグを組んだ時にプロ野球にどのような革新が起こるのかを興味深く見ていく必要がある。野球で例えるなら150キロ後半の剛腕投手とシンカーが持ち味のアンダースロー投手がフュージョン(ドラゴンボールネタ)と言わんばかりに合体し、剛速球をガンガン投げ込む下手投げ投手が誕生するようなイメージだろうか。