2年前の「悪夢」
そして、冒頭の言葉だ。大きなケガを乗り越え、1軍で指揮を執ることになった矢野監督のもとに再び戻ってきた北條自身は、2年前の「悪夢」を払拭しにかかる。実は、17年の春季キャンプでも当時の金本知憲監督からMVPに指名。「北條を使わないわけにはいかないでしょう」と言わしめ、遊撃で不動のレギュラーだった鳥谷敬との一騎打ちは早々と決着してしまった。
だが、オープン戦で一線級の投手を相手に苦しんで開幕を迎えると、最後まで復調が見られずレギュラーの座から陥落。時間にしてわずか数カ月で急上昇と下降を味わった、あの1年……。フラッシュバックして思い返すたび、拳に力が入る。
ちょうど2年後「甘いところがあった……」と厳しい表情になり「そういう経験もあって、まだまだ気を抜かずにやっていく。これからが本番。キャンプMVPに選んでもらってもシーズンでダメだったら意味がないので」と強い自戒を込めた。
キャンプ打ち上げ後、北條と少しだけ話すことができた。1軍クラスの投手との対戦が増えることに「今の実力を試せるか」と聞くと、強く首を振った。
「試せるとかじゃないですよ。もう結果も内容も残していかないといけない。良い投手が来て、お手上げ状態ではダメなんでね」
気づけば、自分のスイングができなくなっていた2年前の3月。あの時、桜の蕾は大きく膨らみながらも、静かに散った。MVPからスタートする2度目のシーズンは甘かった自分を、強くなった北條史也が乗り越える1年。秋まで咲き乱れる「満開」の桜を見たい。
遠藤礼(スポーツニッポン)
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