プロ野球を支えるファンに、今や女性が欠かせなくなっている。福岡ソフトバンクホークスで言えば、タカガールデーを東京ドームで成功させたというのはまさに女性ファンがそれだけ多いという事だ。

 しかし彼女たちに負けないくらいプロ野球を支えている層を、著者は毎試合応援席で目にしている。それが年金受給者層のいぶし銀プロ野球ファンだ。

 こどもの日の前日に公開される記事でありながら、敢えてシルバー世代の財布事情も含めた記事で勝負をかけてみた(笑)。最後までお付き合いいただきたい。

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シルバー世代の上村さん

毎試合ヤフオクドームに通う83歳の上村さん

 昭和11年生まれの上村さん(83)という爺ちゃんは年間指定席を2席買っている。それだけで31万円。今年で18年目の指定席は同じ風景で野球を観るためだ。さらにはクラブホークスのプレミアムメンバー会員(年間10万円)に加入している上御得意様だ。

 言っておくが彼は会社経営者でも会長職でもなく、一般的な年金受給者だ。38年勤め上げた市役所を退職した後の老後を楽しんでいる爺ちゃんだ。

 年金受給をしている年間指定席観戦者は決まって元気が良い。それはプロ野球が生活習慣になっている事が大きな要素で「シーズンが始まってしまえば最後まで見届けたいという意思があるから」だという。

 著者は上村さんに何かあるとすればシーズンオフだと思い、毎年開幕戦になると彼の安否を確認しに指定席へ行き『良かった! 今年も生きていましたね(笑)』という声を掛けに行くのがお約束になっている(笑)。彼もまた『生きちょったよ! だいぶガタが来ちょるけど。』と返してくる。

西鉄バスが販売している「グランドパス65」

 ただ、現実問題としてお年を召されると、お金と時間にゆとりがあっても健康でなければ毎試合ヤフオクドームに通うのは難しくなる。

 そこで上村さんは16年前から週4~5日のジム通いを欠かさない。30キロのバーベルを40回持ち上げ、自転車トレーニングをし、ウォーキングマシーンで歩く。そして自宅がある飯塚市からヤフオクドームまでの片道1時間、バスを乗り継いで愛するホークス選手を叱咤激励しに行く。

 ちなみにではあるが、福岡中のあちこちを走っている西鉄バスが販売している「グランドパス65」は高齢者用の乗り放題チケットだが、飯塚からヤフオクドームの直行便使用不可なので、わざわざ一度バスを降りて乗り換えをしてからヤフオクドームへ通っている。節約できるところはしっかり節約。決して無駄遣いをしないのが戦争経験者の性分だ。

 そして野球場につくと高齢者とは思えない大声で叱咤激励する。

 ただ、今年のホークスで、上村さんが寂しさを感じている事がある。彼が指定席を持つレフトポール際から一番近くを守るはずの中村晃選手が自律神経の病気で開幕から欠場しているため叱咤激励が出来ない事だ。

「心意気もプレースタイルも、あんな実直な男はなかなかおらんからね、今年も激励してやりたいけど戻ってくるまでゆっくり待っとこうかと思うちょる」

 そのように優しく語る表情は親目線……いや、孫を見つめるようだ。