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簡単に美談にしてはいけない……巨人ファンは高木京介とどう向き合うべきか

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/08
note

ファンはどのように向き合っていくべきか

 そして、そのことは高木投手本人が一番わかっているような気がします。

 この日の試合中、ライトスタンドからの大きな“京介コール”を背にしても、試合中ベンチで選手、コーチに「ナイスピッチング」と声をかけられハイタッチをしても、高木投手は笑顔を見せませんでした。試合後のヒーローインタビューで、喜びと感謝を口にする場面でも、彼の表情は緩みませんでした。そんな高木投手を目にすると、なんだか泥だらけの十字架を背負っているように見えました。
 
 きっと高木投手はブーイングも、歓声も、そのすべてを受け止めていくことに決めたのだと思います。批判も覚悟の上でのマウンド。だからこそあの日、白星の喜び以上に、“この先も十字架を背負いながら野球を続ける”そんな決意が伝わってきた気がしたのです。

 星稜高校の先輩でもある松井秀喜さんは高木投手の復帰についてこう話したそうです。

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「復帰をみんなに納得してもらえることは、まずない。ただ、『戻して良かった』と思ってくれる人が少しでも増えるような姿勢を見せてほしい」
「結果で恩返しをする、ということではない。そういう姿勢を示すことが大事だと思う」

 高木投手が今後どんなにいいピッチングをしたとしても、過去の過ちが消えることはありません。決して許されることはなくても、それを受け止めて、マウンドに立ち続ける姿勢を見せてほしい。松井さんのおっしゃることはすごく腑に落ちました。

 同時に、私たちジャイアンツファンがどのように高木投手と向き合っていくのか。どう見守っていけばいいのか。美談かブーイングかの二者択一ではなく、真摯に考えていかないといけないと思うのです。

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